2008年2月25日

いつか王子駅で / 堀江 敏幸

いつか王子駅で (新潮文庫)いつか王子駅で (新潮文庫)
堀江 敏幸

新潮社 2006-08
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「河岸忘日抄」で思いっきり魅了された堀江敏幸さんの、長編第一作。「河岸...」では主人公がクレープを焼く名人で、料理のできる男性に憧れる私はそれだけでうっとりとしながら、さらに訥々と語られる文学の蘊蓄に胸を震わせて、喜びを噛みしめながら読んだものだ。今回の主人公は、古米にはこだわるけれどちょくちょく小料理屋で食事を済ませるような、翻訳やもの書きの傍ら生活のため時間給講師をやったりする古書好きの男で、NTTも直しに来てくれないような黒電話に愛着を持って、リサイクルショップで買った3,000円の自転車で遠出したりする、スローライフな人。↑この文章が長いのは堀江氏の真似。ひとつの文章が終わるまでにえらくたくさんの説明が出てきて、帰結まで腰を据えて待たなければならない。でも、そんな修飾の丁寧さが優しく感じられて心地よい、穏やかな文章を書く人だ。

冒頭に出てくる昇り龍の正吉さんは、カステラを残して消えてしまう。古書屋の筧さんはツケで本を売ってくれた。大家の米倉さんの娘の咲ちゃんは中学生で、亡くなったお母さんのかわりに夕ご飯を作る。カレーとが、旨い。小鍋で美味しいコーヒーをいれる小料理屋の女将さんは、教習所へ通っている。米倉さんの工場の旋盤工の林さんが書いた《旋盤ハ二刃ヨリ芳シ》という標語。主人公をとりまくのはこんな感じの人々だ。王子の下町の、素朴な生活。でもそれだけじゃない。「私」の脳裏には常に小説がある。東京モノレールを見てジャック・オーディベルティの『モノラーユ』を連想する(モノレールは出てこない)。島村利正の『残菊抄』は筧さんから購入、『暁雲』の夫婦の「ほのかな狼狽」を自分の生活に置き換えて、真面目に考え込む。咲ちゃんの宿題を手伝いながら安岡章太郎の『サアカスの馬』について考察する。渡し船と聞けば徳田秋声の『あらくれ』。主人公お島は堪え性がなくて、「待つ」ということができない。ここで待っても来ないものを待つことの度量の大きさに思いを馳せるのだから、この主人公はつくづく面白い。と言うか、彼の生活は極めて地味で平凡そうなのに、その内面は万華鏡のようだ。

堀江氏は仏文学者でもある。その文学に対する造詣は計り知れないが、小説を本当に愛していてついこぼれるように生活の中にそれらがオーバーラップしてしまう様は、大変に好ましい。そして同時に日常生活も愛おしむことのできる心のやわらかさも、魅力。

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2008年2月17日

サウンドトラック / 古川 日出男

サウンドトラック〈上〉 (集英社文庫)サウンドトラック〈上〉 (集英社文庫)
古川 日出男

集英社 2006-09
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サウンドトラック〈下〉 (集英社文庫)サウンドトラック〈下〉 (集英社文庫)
古川 日出男

集英社 2006-09
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「LOVE」「ベルカ、吠えないのか?」のあと、古川日出男氏の初期の作品をゆっくりと読み進めている。2003年出版の今作は青春小説と謳われているが、甘さ切なさは感じない。登場人物はみんなすごーく信念があって、自分の信じるまま迷うことなく前に進んで行く。「沈黙」「アビシニアン」 の謎めいたモチーフ(遺されたレコードとか)がところどころに見られるが、彼らがポジティブなので、それらの存在感は弱い。以下ネタばれ。

トウタは6歳で父親と一緒に乗っていたクルーザーが遭難し、ひとり小笠原諸島の無人島に漂着する。マッチョな父親にサバイバルを仕込まれていたので生き延びる。4歳半のヒツジコは無理心中をはかった母親と共に客船から海に飛び込むが、偶然救命ボートに落ちてトウタの島に漂着する。ヒツジコを守りながら成長するトウタ。野生のヤギが棲む島で。ある日地震が起きる。ヒツジコは突然の身体の浮遊感覚に呑まれる。トウタは安全なシェルターを見つける。シェルターの中で焚き火を起こす。焚き火の影(=映像)を見ながら、ヒツジコは地震の時の感覚を再現しようとして舞い始める。

ここまでたったの35ページ、怒濤の展開だ。このあとヤギの駆除のために無人島に訪れた捕獲要員がふたりを発見し、兄妹とみなされたふたりは父島で養父母を得る。トウタは野生を磨き、ヒツジコは衝動のまま自己流のダンスをつきつめていく。そうかこのままこの二人は一緒にほのぼのと成長して行くんだな〜と思っていると、それは甘い。ヒツジコは新しい養父母に引き取られて内地に行ってしまうのだ。ここまで129ページ。

この先は全く先が読めなかった。トウタとヒツジコは一切接触しない。ヒツジコが手紙を書くシーンはあるんだけど、発送しない。トウタも中学卒業後独立を促されて内地に行くのだけど、ヒツジコに連絡したりしない。レニというアラブ人少女が舞台に登場してきて、独自に動く。読者にとっては全くの混沌・・・。

トウタとヒツジコとレニの、三者三様の生き方が面白い。私はヒツジコの舞踏の衝動に強く惹かれた。舞踊譜を読みバレエの基礎を学んで自在に踊れるようになったヒツジコは、見た者の意識を操作してしまうようなダンスを始める。バレエやダンスを愛する者にとって、ヒツジコはミューズだ。折しも東京はヒートアイランド現象が高じて熱帯性の伝染病が流行り混乱の極み。ヒツジコはジャンヌ・ダルクの様に、レニとトウタはゲリラ的にトウキョウで生き延びていく。最後に邂逅する3人は救世主として生きて行くのだろうか..。

古川日出男氏の冴え渡った筆が読者の干渉を許さない、そんな気の強い小説。切なさがない点で読んでいて安心感があり、同時に余韻は少ない。これが現代の小説の潮流なのかなあと、割と納得して本を閉じた。湿っぽいのは嫌いだから。

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2007年12月31日

二〇〇二年のスロウ・ボート / 古川日出男

二〇〇二年のスロウ・ボート (文春文庫 (ふ25-1))二〇〇二年のスロウ・ボート (文春文庫 (ふ25-1))
古川 日出男

文芸春秋 2006-01
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村上春樹氏の「中国行きのスロウ・ボート 」のリミックス(カヴァー?)とされているが、あまりに昔の短編小説なので本編の内容は忘れてしまった。古川氏は村上氏の大変なファンと聞いているから、それも申し訳ない話だけど。

古川氏のこれは、東京脱出の物語なんだけど、そう言っても何のことがわからないと思う。「僕」は挫折を繰り返してきた。女の子を好きになって、いい感じになり出すと女の子が突然遠くに行ってしまう。僕は必死で追いかける。でも何かに妨げられて決して東京を脱出することができない。喪失の物語だ。

3人目のガールフレンドのことは、特に強く愛していた。身をひくような形で彼女と別れた僕の青春は、これで終わり。今はソニー・ロリンズのOn A Slow Boat to Chinaを聴きながら、また東京の境界線に来ている。夢の島だ。コロシアムの観覧席に座って、夢想している。それでも逃げない、と決めた瞬間に僕は永遠の夢の中に取り込まれてしまう。

最初のガールフレンドの妹から、姉が亡くなったと手紙が届く。僕は中国行きのスロウ・ボートに密航した。

薄いんだけど説明するのがすごく難しい本で、さらっと読めるけどたまらなく切ない何かが残る。読む人によってフィルターを通ってくるモノが全然違うのではないか。村上春樹の小説にはなぜか万人が共感を抱くようだけど(私も)、古川日出男はちょっと癖があって、そこが好き。特にこういう短い話は、読むんじゃなくて聴く・感じればいいのだと思う。文体が独特で、ある意味わかりにくいし、でも変則的なリズムが心地よい。

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2007年10月13日

アラビアの夜の種族〈1〉〜〈3〉/ 古川 日出男

アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)
古川 日出男

角川書店 2006-07
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アラビアの夜の種族〈2〉 (角川文庫)アラビアの夜の種族〈2〉 (角川文庫)
古川 日出男

角川書店 2006-07
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アラビアの夜の種族〈3〉 (角川文庫)アラビアの夜の種族〈3〉 (角川文庫)
古川 日出男

角川書店 2006-07
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『LOVE』から入った古川日出男さん、全作読破を決めているが読み始めると面白くて飛ばしてしまうので、ちびちびと楽しむようにしている。『ベルカ、吠えないのか』『沈黙/アビシニアン』『13』に続いて今回は文庫本3冊の大作。今まで読んだ中で最も娯楽性が高く、ぺろりと頂いた。古川氏の幻のデビュー作(未完なので)、ゲームのノベライズ『砂の王』は本作の原点らしい。ゲームねえ、やらないのでよく知らないけどなるほど勇者が出て来て修行したり怪物を倒したりするのはまさにゲームの世界かも。でも彼の「語り」は豪奢で奇想天外、ゲームやるよりよっぽど異世界に飛べると思う。

一方で「ブンガク」の観点から見ると。刺激はなかったなあ。優れた小説を読む時に感じる切なさ・胸苦しさ・覚醒感とは無縁。でも古川氏はあえて娯楽性を全面に押し出して読者を突き放したような気がする。単に好きだから、書きたかったから書いた。プロの作家として認められたから、自分のカラーを出した。そんな感じ。だからこの後に書かれた作品(次のステップ)が非常に楽しみ。出し惜しみしながら読んで行こうと思っているが、2008年には『聖家族』という壮大な作品が刊行されるらしいのでそれまでに読破してしまいたい、という気持ちもある。同時代の作家を好きになるとは、楽しいことだ。

 古川日出男公式サイト

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2007年6月17日

アフターダーク / 村上 春樹

アフターダークアフターダーク
村上 春樹

講談社 2006-09-16
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今月はじめくらいにリチャード・パワーズの新作を読み始めたのだが、読者を翻弄するかのようなパワーズ節に圧倒されて、やっと半分を過ぎたところだ。400頁余りあるハードカバーなので休日に出かける時にはバッグに入れる気になれず、ふつう本の二股読みはしないのだが、替わりに入れたコレ(『アフターダーク』)をさっさと読了してしまった。

村上春樹の小説は喉越しが良過ぎて、蕎麦のようにつるつるっとお腹におさまってしまう。ハードカバーで買わないで文庫が出るのを執念深く待つのはこのためだ。待ち過ぎて、『スプートニクの恋人』は買ってないけど。あれはちらっと立ち読みしたけど、なんか読む前から読み終わってる感じがした。ああ、『アンダーグラウンド』も買ってないなあ。読むのが怖いのだ...。

『アフターダーク』はクールだった。クールダウンしてて、従来のハルキファンにはあまり好かれないんじゃないかあと思った。マリと高橋、マリとカオル、マリとコオロギ。彼らの会話はいかにも村上春樹的。でも昔の作品(クロニクルあたりまで)では会話の空回りみたいのを私は感じていたのだが、マリの19歳という年齢のせいなのか、会話というコミュニケーションが前向きになっている。きっとマリは19歳でなきゃならなかったのだな。

いいなあと思ったコオロギの科白。
「・・人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくものなんやないのかな。その記憶が現実的に大事なものかどうかなんて、生命の維持にとってはべつにどうでもええことみたい。ただの燃料やねん。・・」
長くなるのでここで切るがその比喩の仕方も巧くて、膝を打った。こんな一見わけのわからない彼女のアドバイスがエリを救うわけで。私も自分を振り返って、なくなってもいいなと思っていた昔の記憶にすごい愛おしさを感じた。

あっさり、シンプルな構成のこの小説はカフカやクロニクルの混沌とした大作に較べて、意外と心に強く残った。

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2007年5月 6日

13 / 古川 日出男

1313
古川 日出男

角川書店 2002-01
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1998年出版、古川日出男氏の実質的なデビュー作『13』(じゅうさん)を読了。

本当のデビュー作は『ウィザードリィ外伝II 砂の王(1)』(ISBN: 4893661612)(1994年)というゲーム小説らしいが、「(1)」とタイトルについているものの続編はなく、今のところ絶版になっている。これは『アラビアの夜の種族』(ISBN: 4048733346)の原型となった隠れた名著とAmazonのレビューにあるので、いずれ読んでみたいと思っている。デビュー前の古川氏は大学中退後編集プロダクション入社し、1991年より舞台演出家として活動されていたそうだ。こういう背景を知ることで彼の小説に描かれる世界がなぜあんなに幻惑的なのか、少しだけ理解できるように思う。

本書は2部構成。第一部「13」と、その衝撃的なラスト(ひとつの世界が破滅する)から数年たった後日談のような第二部「すべての網膜の終わり」。第一部は主人公の少年響一の色彩の探求の物語、そしてザイールの種族間の争い、キリスト教の伝搬が描かれる。古川氏の小説では感覚が重要なポイントだ。今まで読んできた『LOVE』『ベルカ、吠えないのか』『沈黙/ アビシニアン』では一様に聴覚や嗅覚や闘争本能などが異様に発達したキャラクターが出てきたが、今回響一は片目だけの色覚異常(不妊治療薬の副作用による)により独自の色彩感覚を持っている。障害を持つと同時に天才でもあり、「二六歳の時に神を映像に収めることに成功した。」(冒頭から引用)。彼の目に映る、そして彼が造り出す色彩は言葉で説明することは不可能なはずなんだけど、古川氏の文章は読む側に限界一杯の想像力の稼働を強いる。心地よい脳の疲労。

第二部では一部のような緊張感、未知の世界へ分け入って行く高揚感はない。舞台は主にSF(シーフードが食べたくなる)、女優や映画監督やクリエーターやロックミュージシャンなど華やかなキャラクターがぽんぽん出てきて、百花撩乱だ。すごく楽しい。響一はすでに臨死体験を引き起こすほどの映像を創る技術を持っていて、飄々と自分の世界を探求している。各登場人物の動きが多元的に(並行して)描く手法は村上春樹氏を彷彿させた。古川氏は熱烈なハルキファンだそうなので、影響があるのだろう。もしくは脚本を書いていた経歴のせいか。ただし村上文学のように破滅か破壊に向かって行くクライマックスは用意されていない。この辺が読む人によって生温く感じるかもしれない。私としてはラストの超常現象で物語がひとつの終息を迎えたので、納得して読了したが。

色彩と音(音楽)。今回これらのモチーフの表現が鮮烈で刺激的で、古川作品を読んでいつも思うことだが自分の感覚をもっと(痛いほど)鋭敏にしたいと、切実に感じた。

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2007年2月25日

沈黙/アビシニアン / 古川 日出男

沈黙/アビシニアン沈黙/アビシニアン
古川 日出男

角川書店 2003-07
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古川日出男長編第2作と第3作のカップリング。これまで『LOVE』『ベルカ、吠えないのか』を読んで熱くなっていたが、今回初期の作品も非常に良質であることを知り、ファンとして彼の作品をくまなく読んでいく決意を新たにした。同時代の作家を追いかける...なんて楽しいことなのだろう。

『沈黙』は壮大な小説だ。冒頭は第二次大戦中のタイが舞台だ。特務機関員の鹿爾は優れた変装能力で生き抜きながら、運命に導かれてある場所に向かう。闘鶏の、黄金の寺院の、阿片窟の描写が生き生きとしている。文章の隅々に無駄がなく、読みこぼしのないよう普段使わない電子辞書でいちいちわからない単語を調べながら読んだ。「銓衡」とか。鹿爾はあるものを失い日本に戻る。

舞台は一転現代の東京に変わり、美大生の薫子が主人公として現れる。彼女は偶然邂逅した亡き祖母の姉を通じて、鹿爾の長男修一郎の遺した「ルコ」という音楽を知る。その歴史は17世紀アフリカに遡るが、薫子は膨大な記録を解き明かし遂には自分が「ルコ」を産む。運命に導かれて。そして音楽の中で修一郎と鹿爾の運命を知り、自分も同じ道を辿る。薫子は強いパワーを持つのだけど、それ故に最後はとても孤独だ。彼女も沈黙の世界に取り込まれてしまうのだろうか。ここまでミステリを読むように一気に追いかけて来たが、読後胸に残る喪失感が甘く深く切ない。

『アビシニアン』は「再生」の物語であり堂々とした恋愛小説だ。少女(エンマ)も青年(シバ)も社会の枠から外れたある種異邦人なのだが、その野生っぷりが愛を最強のものに押し上げている。エンマを通して描かれるこの現実世界は、あまりに鋭く美しい。物語のラストの文章は、詩だ。最近古川日出男の朗読ギグが企画されているが、彼の文章は演劇的であり朗読にふさわしいと思う。行ける日を楽しみにしている。

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2007年1月24日

ツ、イ、ラ、ク / 姫野 カオルコ

ツ、イ、ラ、クツ、イ、ラ、ク
姫野 カオルコ

角川書店 2003-10
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恋愛小説。たしか橋本大也さんの推薦本だ。少女の成長を描くだけでなくある種群像劇でもあるので、長い。950枚もある。面白いことは面白いのだがこのページ数を読み切るのは結構負担だった。助走が長過ぎて、ジャンプし損ねてそのまま失速した感あり。

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2006年12月27日

ベルカ、吠えないのか / 古川 日出男

ベルカ、吠えないのか?ベルカ、吠えないのか?
古川 日出男

文藝春秋 2005-04-22
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古川日出男2冊目読了。やっぱり好きだ。これは歴史小説なんだなあと私は捉えたんだけど、それに気づいたのが半分ほど読んでから。巧すぎる。イヌ達に振り回されてしまった。H17上半期直木賞に落選したらしいが、この世界観は独特で、あえて万人向けに丸めていないところが風味なので仕方ないか。大体直木賞を取った作品を読みたいと思ったことはないし。結構ハードボイルドだがラストはお伽話。ご都合主義と呼ぶ人もいるだろうけど、これもやはり味付けであり私は後味美味と判定。文体なんかも、書きなぐっているふうなところもあるがそれが疾走感を呼ぶ。計算でしょう。ただし翻訳に耐えうる文体なのか、やや心配。

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2006年12月16日

ひなた / 吉田 修一

ひなたひなた
吉田 修一

光文社 2006-01-21
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特に蕎麦が好きと言うわけではないが、吉田修一の小説はお蕎麦のようにつるつると体に入ってくる。もちろんプロの味だ、香りものどごしも良い。この本は長編で、半分過ぎたくらいのところで「結末は怖くなる」という予感を抱いたのだが、それは回避された。加筆修正されたとは言え、JJに連載されていたので手加減があったのか。でも吉田修一の作品に「修羅場」って思い当たらないような気がする。淡々と話を運びつつ、一瞬人の背筋をぞくっとさせておいてまた素知らぬ顔。これが趣味なのかな。でもいったん動き出した想像力は止まらないから、後味はやっぱりほろ苦。

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2006年12月10日

日曜日たち / 吉田 修一

日曜日たち日曜日たち
吉田 修一

講談社 2003-08-26
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短編集。読み始めるとあっと言う間に読み終わってしまうのでちょっと物足りないのだが、割と好きな作家だ。まだ4、5冊くらいしか読んでいないが、毎回「巧い!」と思う。心理描写が気味悪いくらいリアルで、でも文章に抑制が利いているのでいやらしくない。この作品は各編にお約束のようにある兄弟が登場してきて、古川日出男の群像劇小説『LOVE』を彷彿させた。

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2006年11月30日

LOVE / 古川 日出男

LOVELOVE
古川 日出男

祥伝社 2005-09
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はじめての作家だったが読み始めてすぐに虜になった。あっという間に読了したのに感想を書くのを引き延ばしていたのは、何て書けば感動を言い表せるのかわからなかったせいもある。感動したのはストーリーとか心理描写とかにではない。この小説のスタイルがとても斬新だったからだ。著者あとがきで「これは巨大な短編だ。四七〇枚の、でも全体でひとつのショート・ストーリー。」とあって頷いた。あらすじを追えば要は群像劇であり、ひとつひとつの短編が皆独自性を持ちつつどこで切っても『LOVE』そのもの。各編一人称の語り手がいるが、その人が特別な立場とか役割を持っているようには見えない。この語り手の役を他の登場人物と取り替えても成り立つ感じ(一番はじめの編だけは「彼」のままがいいけど)。古川氏はインタビューで、学生の頃演劇部で脚本を書いていたので自分のルーツはシナリオにあると語っている。これを読んで、『LOVE』の人や場面や時間がめまぐるしく展開して行く構成が舞台に似ているように感じた。あと、短編と短編の間にショート・ストーリーを挟む形式は、スチュアート・ダイベックの『シカゴ育ち 』を思い出す。

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2006年10月 1日

八月の路上に捨てる / 伊藤 たかみ

八月の路上に捨てる八月の路上に捨てる
伊藤 たかみ

文藝春秋 2006-08-26
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そう言えば数日前たまたま手にする機会があって、一気に読んだのだった。日本の現代小説ってみんな似ている。ありきたりな日常、でも必死だったり切なかったり。あきらめもあり。暴力に走るもあり。あとは感性で勝負という感じか。この著者は会話の運びが上手い。併録の『貝からみる風景』の方が個人的には好き。表題作と共に「結婚」がひとつのテーマになっているけど、より前向きだからだ。

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2006年9月14日

イッツ・オンリー・トーク / 絲山 秋子

イッツ・オンリー・トークイッツ・オンリー・トーク
絲山 秋子

文藝春秋 2006-05
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はじめての作家。よく読ませて頂いているブログで紹介されていたので、軽い気持ちで。表題作の、ちょっと変わった女の不毛な男女関係、が意外と胸に迫ってきて、一気に読んでしまった。彼女の他者との距離感にリアリティを感じた。その親近感は併録作でも継続。おまけとして、愛情溢れる「解説」もなかなか良かった。

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2006年8月 8日

短篇集 バレンタイン / 柴田 元幸

短篇集 バレンタイン短篇集 バレンタイン
柴田 元幸

新書館 2006-06-01
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みんなが大好きな翻訳家、柴田元幸先生の小説!自分を「君」と呼んでみたり少年時代を語ったり、ややエッセイめいた短編集だが、「妻が故障」したり「包丁を持ったばあさん」に追いかけられたりもする。妄想もありというところか。このでこぼこ具合が新人小説家ふうで良いのだが、柴田先生には本業(研究じゃなくて翻訳)で頑張って頂きたいと言うファンとしての願望もあり、小説はたくさん書いて欲しいような欲しくないような微妙な気持ちだ。文体は淡々としたハルキ風(と素人が言うのはあまりに生意気)。でも書き続けられたら変わっていくと思う。

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2006年7月12日

女たちは二度遊ぶ / 吉田 修一

女たちは二度遊ぶ女たちは二度遊ぶ
吉田 修一

角川書店 2006-03-25
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こういう男性視点の女の話は面白い、と素直に思った。軽く読め過ぎてしまうので物足りないが、損した感じはしない。多分読み返せばふんふん、そういうことかー、と新たに気付く事もあると思う。吉田修一は巧い。どの話も白ける部分が全くなく、安心して没入できる。

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2006年6月28日

河岸忘日抄 / 堀江 敏幸

河岸忘日抄河岸忘日抄
堀江 敏幸

新潮社 2005-02-26
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河岸に停泊したままの船に住む、彼。淡々と、本を読み・レコードを聴き・珈琲を煎れ・クレープを作り・デッキで煙草をふかす。人生半ばの隠遁生活だ。一緒に川面で揺られながら「非日常」を堪能させてもらった。あまりに私の嗜好に合った(と言うか憧れの)生活なので、すっかり同化してしまってただただ満足しつつ読み終えたところ。著者について検索してみて、先日本家ブログで言及したエルヴェ・ギベール著『赤い帽子の男』の翻訳者であった事を知り、意外な接点があったことにひとり喜んだ。堀江氏の作品を読むのは今回がはじめてだったけど、1990年代に彼の文章に触れていたわけだ。検索では大ファンであるブロガー梅田望夫さんの言及もひっかかった  http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20041214/p8

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2006年6月20日

インストール / 綿矢 りさ

インストールインストール
綿矢 りさ

河出書房新社 2005-10-05
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今頃、なんだけど読んだ。文体が面白かった。そろっと崩れて口語に陥っちゃうのかなーと眉を顰めかけると、そうでもなくてちゃんと文章は完結して段落ごとのまとまりも保たれている。作為じゃないんだよね、こういうふうにしか書けなかったんだよねと思ったらすとんと胸に落ちるものがあった

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2006年5月16日

パーク・ライフ / 吉田 修一

パーク・ライフパーク・ライフ
吉田 修一

文藝春秋 2004-10
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一文一文に無駄がなく、素人ながら「巧いねえ」と呟きながら読み進めた。一応ありきたりな東京居住者の日常、を淡々と描いているんだけど、意外と展開が読めない。主人公の視線の動き方ひとつ取ってもあまりにリアルに描かれるため、追う側に新鮮な驚きがもたらされる。相性なのかなあ。この作家は妙に気になる。内容のちょい重い、非日常的な長編を描いて欲しいけど、そういうのはやらないかな

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2006年5月10日

東京タワー / 江國 香織

東京タワー東京タワー
江國 香織

マガジンハウス 2001-12
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とても口当たりのよい小説。映画化されているので、観てないのに詩史=黒木瞳のイメージで読んだ。耕二が最後壊れていくあたりで少し面白味を感じたけど、あとは気持ちが動かなかった。小綺麗なカフェでちょっとお茶した、という感じの読後感だ

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2006年4月30日

アキハバラ@DEEP / 石田 衣良

アキハバラ@DEEPアキハバラ@DEEP
石田 衣良

文藝春秋 2004-11-25
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これ、面白かった。この作家はネット好きなのだろうか。好きで好きでこういうのを書いたのなら、うれしいなあと思った。登場人物の設定など漫画的(ややご都合主義)だけど、ハーレクインが好きな人が徹底的に美化された男女キャラを「当然」だと感じるように、オタクの世界が好きな人には「自然」な世界だ。TVドラマ化されるそうだけど、いかにもという感じ。昨今の小説はやはり映像化を意識して書かれるものなんだろうなと思う。菊池寛からしてそうだったらしいし(先日まで小林秀雄を読んでいたので、こんな連想をした)、ポール・オースターも映画に走っているし。より多くの人に自分の構築した世界を伝えるためには、テキストのみの配布では無理、という現代だ

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2006年4月29日

ブルータワー / 石田 衣良

ブルータワーブルータワー
石田 衣良

徳間書店 2004-09-16
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『王家の紋章』(細川 智栄子)みたいなSFだ。主人公が唐突に時空を超えちゃうんだよね。かなりご都合主義的な展開だけど、そこがまた。 人気作家らしいので手に取ってみたが、中盤までは読むのに少し苦痛が伴った。まあ半分越えれば結末が気になるから一気だったけど。漫画だと思って読めばよい娯楽作かなと思いました

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2006年4月25日

7月24日通り / 吉田 修一

7月24日通り7月24日通り
吉田 修一

新潮社 2004-12-21
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かなりきた。女性が一人称で語る形式、すごくリアルだ。主人公の夢見がちなところとちょっとネガティブな内面が、身につまされると言うか私自身を見破られているような気がして、きっとそう感じる女性が大勢いるんだろうなあと作家の「巧み」に感心した。

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2006年4月24日

春、バーニーズで / 吉田 修一

春、バーニーズで春、バーニーズで
吉田 修一

文藝春秋 2004-11-20
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予想通りそりゃもうあっさりと読み終わってしまった、短編集。でものど越しの良いこの作家、軽く病みつきになりそうな気がする。出会ったのは『パレード』だったけど、軽くあしらうつもりで読んでいたのに、最後気付いたらあしらわれていたのは私だった。 東京でごくふつうに暮らす男、のふつうの話。なぜ面白いの?まあブログなんかでも、ふつうの人がちょっとしたこだわりを持っているのを発見して共感するのが楽しかったりする。この作家はそういう凡人心理を巧みに利用していたりして。あと、ほど良い距離感が快適。

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2006年4月18日

泳ぐのに、安全でも適切でもありません / 江國 香織

泳ぐのに、安全でも適切でもありません泳ぐのに、安全でも適切でもありません
江國 香織

ホーム社 2002-03
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現代作家を読まなければ、という思いでやたら眼にするこの作家の本を手に取った。平易で面白いので帰りの通勤電車の中で読み始めて、翌朝の出勤電車でさらっと読了。短編集とは言え字数が少な過ぎるのでは、と思った。読んでいる間は気持ち良いけど本を閉じたら何も残らない感じもした。でも。電車で読むものがなくなってしまったので二度目読みを始めたら、ひとつひとつの物語の繊細さがよく見えた。女性と恋愛がテーマのようだけど、山田詠美ほどアクが強くなくうまく謳いあげている。恋愛と食欲は密接だ。『うんとお腹をすかせてきてね』を筆頭にそのへんもちゃんと(がしっと)捉えている。

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2006年4月17日

作家の顔 / 小林秀雄

作家の顔作家の顔
小林 秀雄

新潮社 1961-08
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タイトル通り作家(小説家・戯曲作家・詩人)の評論なんだけど、対象は親しい人や思い入れのある海外の巨匠で、堂々と主観を掲げて評する姿勢に自意識の強さを感じた。そしてそれが魅力。氏の時代は夭折する芸術家が多かったようで、評論=追悼文という文章が多い。淡々と語られる「友」の想い出は芸術性の高い写真のように永遠となり得る一瞬を切り取った感がある。やはり桁外れに強い感受性を持った人だったのだろう。透徹した眼と相まって、胸に迫る描写だ。 全体的にとても美しい文章だった。ランボオの部は読者が襟を正さざるを得ないような氏の高揚感を感じた。

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2006年4月10日

Xへの手紙・私小説論 / 小林 秀雄

Xへの手紙・私小説論Xへの手紙・私小説論
小林 秀雄

新潮社 1962-04
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恥ずかしいことに未読だった。難しいだろうなあと構えて読み始めたが、前半は氏が若かりし文学青年だった頃の創作小説。ものすごく鋭敏な眼で世界を捕らえているので、頭に浮かぶ光景が眩しくてくらくらした。『Xへの手紙』あたりからやや評論めいてくるが、このあたりはまだ自分の心情を素直に吐露している感じ。青年の苦悩?
ブンガクに疎いので評論に関しては元ネタを知らないと言う絶対的不利がある。でも氏の理知的な文体が好きだ。陶芸や映画や音楽に関する記述も奥が深く、多くの人が心酔する気持ちがわかる

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2006年3月19日

文明の憂鬱 / 平野 啓一郎

文明の憂鬱文明の憂鬱
平野 啓一郎

PHP研究所 2002-01
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Voiceという雑誌に2年間掲載されたエッセイをまとめたもの。作家自身が語っているように「はじめはあんまり上手く書けなかった」感じだけど、大好きな『葬送』執筆中だったらしいので感慨深く読んだ。後半の切り口は素晴らしい。

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滴り落ちる時計たちの波紋 / 平野 啓一郎

滴り落ちる時計たちの波紋滴り落ちる時計たちの波紋
平野 啓一郎

文藝春秋 2004-06-29
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実験的な創作を続けているんだなあと思いながら読んだ。技巧を感じる。だから一歩下がって見守るようなスタンスで読んだ。『閉じこめられた少年』の緊迫感はすごい。引き籠もりの話、『最後の変身』はなかなか読み応えがあったけど、村上龍の方がリアルだ。現時点では買えないけど、作家のこれからの変貌に期待してます。

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2006年3月 1日

高瀬川 / 平野 啓一郎

高瀬川高瀬川
平野 啓一郎

講談社 2003-03
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技巧に走った作品集だなあと思う。描写は丹念でいいけど、話の展開がやや遅いのでこちらはつんのめりそうになります。「氷塊」なんて上段と下段で物語が並列的に進行して、最後にちゃんとひとつに交わる。すごい計算だと思うけど人物の心理にリアリティがないように思った。
でも、基本的に平野氏の文章は好きだし初期の作品だからいいか、という感じです。

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2006年1月 8日

日蝕 / 平野 啓一郎

日蝕日蝕
平野 啓一郎

新潮社 2002-01
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漢字ってとても便利で、単語が眼に入った瞬間くっきりと情景が脳裏に浮かびます。ただしこれは見知った言葉に限られます。この小説にあるように「応える」に「いらえる」みたいなルビを振られちゃうと脳内変換が一瞬ぎこちなくなり、ああ15世紀フランスなんだわ!みたいな再認識がいちいち入るから文体に重厚さを感じるわけですが、ストーリーはごくシンプルです。「錬金術」はあり得ないと思っているのでその記述部で正直白けますが、こんなふうに結晶体みたいな文章を紡ぐ平野氏には敬意を感じます。言霊があると思う。

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2006年1月 3日

一月物語 / 平野 啓一郎

一月物語一月物語
平野 啓一郎

新潮社 2002-08
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「葬送」で平野氏のファンになり期待いっぱいで読み始めた。漢字が多いのにびっくりしたが、明治の匂いがするこういう文体は嫌いではない。漱石によく「畢竟(ひっきゃう)」なんて単語が出て来るので、懐かしい感じすらする。「奈何なる言葉も、自然の最も深遠な美に到達した瞬間には、悉く無力となる」「認識主体である人は、対象である自然と劇的に一致して、認識そのものが不可能となってしまう」。こういう部分は青年詩人の思索を通して語られる作家自身の芸術観なのかなあと興味深く読んだ。物語は美しくて短い。鮮烈であるような中途半端であるような..。「解説」の渡辺氏がこの小説を現代の神話と位置づけ構成を能に喩えて説明を加えてくれたので、なんとなくわかったような気になった次第。実験的な作品なのか、あっけないという印象が残るが嫌いではない。

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2005年12月14日

パレード / 吉田 修一

パレードパレード
吉田 修一

幻冬舎 2004-04
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はじめて読む作家。青春小説と言うか妙に平和な若者達の共同生活が楽しげに描かれ、するすると油断しながら読み進める内に後半仄かに緊迫してくる。で気付いたらラストは衝撃的だった。好きな作家、とはならなかったけど今度「パークライフ」を読んでみたい。

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日本文学史 / 小西 甚一

日本文学史日本文学史
小西 甚一

講談社 1993-09
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復刊した「幻の名著」と聞いて買った。序文が書かれたのが昭和28年!"わたくしは.."という語り口が奥ゆかしくて良いです。様式美の「雅」vs.自由奔放な「俗」、という理念で古代からの日本の文芸を分類・評価して行く壮大かつ細やかな書。すごい教養です。漢字遣いが難しいけどコンパクトにまとめられていて、最後の方で大好きな漱石が「近代の巨人」と評されていたので深く頷きました。

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2005年12月 7日

葬送 / 平野 啓一郎

葬送〈第1部(上)〉葬送〈第1部(上)〉
平野 啓一郎

新潮社 2005-07
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葬送〈第1部(下)〉葬送〈第1部(下)〉
平野 啓一郎

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葬送〈第2部(上)〉葬送〈第2部(上)〉
平野 啓一郎

新潮社 2005-08
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葬送〈第2部(下)〉葬送〈第2部(下)〉
平野 啓一郎

新潮社 2005-08
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純文学好きなので日本の現代作家はどうも馴染めなくて、名前も知らないことが多い私。ブロガーの梅田望夫さんが文庫化をきっかけに「ここ数年に出た日本の小説の中で、最も多く再読した」と書いていらしたので、最近4冊まとめて購入した。
電車の中などで読むものだから一部上の半分くらいまでは冗長で退屈...と読書に集中できず困っていたが、ドラクロワがマニュエル・ガルシアという人と演劇論を交わし今いち話が噛み合わないまま、議論が絵画における芸術表現にシフトして行くシーン。ドラクロワは絵という静止した世界に連動する時間と動きの中の理想的な一瞬を切り取り描きたいと熱く語り、やっぱり相手に理解されなくて「議論なんて無駄〜」と内省に入ってしまうのだけど、この機微が面白いし真に迫った天才の思索の描写に驚愕!してしまった。だって作家(平野氏)は当時27歳くらい、何でこんなにリアルに絵画の秘密を解き明かせるの?
この後はもう夢中になって読み進みました(相変わらず電車でだけど)。天才の歓喜と孤独、音楽を聴いているように錯覚してしまうほど緊迫した演奏会の描写(楽譜の解釈)、豊かに語られる絵画の理論、19世紀フランスという時代、人間のコミュニケーションの難しさ。文章の量は2,500枚と膨大なのだそうですが、読後の印象は「凝縮された」小説。気に入ったところにアンダーラインなど入れながら、再読したいと思っています。

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2005年10月 5日

マグネット / 山田 詠美

マグネットマグネット
山田 詠美

幻冬舎 2002-04
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久しぶりだしなあ、と「風味絶佳」のついでに Amazon で買った短編集。うーん.....習作ですかあ、という感想です。

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2005年10月 3日

風味絶佳 / 山田 詠美

風味絶佳風味絶佳
山田 詠美

文藝春秋 2005-05-15
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本当に綺麗な文章を書く人だ。「蝶々の纏足」か「晩年の子供」以来だけど、今回もまずそう感じた。
彼女は男女間の話が好きだから、たくさん読むと食傷する。色気と壮絶さじゃ三島由紀夫なんかにはかなわないし。でも美しい言葉を綴ろうとする情熱を失わないところが、現代作家の中では結構好きな所以。

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2005年9月26日

鳶がクルリと / ヒキタ クニオ

鳶がクルリと鳶がクルリと
ヒキタ クニオ

新潮社 2005-08
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父親に「半島を出よ」と「信長燃ゆ」をあげたら「じゃあコレをやる」と渡された。 鳶の話 。癒し系。
視点は主人公の脱OL・28歳の女性。「日本晴れ」という鳶の会社が舞台で、それだけでちょっと和みます。観月ありさ主演で映画化されて、昨日某サイトのレビューを読んだけど、酷評でした。この著者のデビュー作は「狂気の桜」(未読)だそうで、これも評判いまいち。作品を追いかけて読みたいと思うほどの筆力は感じません。

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