2008年5月 5日

雪 / オルハン・パムク

雪
オルハン・パムク 和久井 路子

藤原書店 2006-03
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読んだのは2月の寒い頃ですが。雪の季節に読まなきゃなあと思って。実際今年は雪が多かった・・・。

前作「私の名は紅(あか)」は去年の秋に読んだ。オルハン・パムクが2006年ノーベル文学賞を受賞したせいで話題になったのは「雪」の方なのだけど、装丁の華やかさと細密画師の話であるという点に惹かれてこちらを先に買った。濃密でロマンティックな小説で、細密画自体好きなのでその世界に触れることに喜びを感じながら読んだ。展開が気になってするすると読めてしまう本。恋愛とミステリが絡まり合っているため緊迫感を保ちつつ、たっぷりと芸術に対する畏れが語られる。素晴らしい技法だった。

この「雪」は作家自らが政治小説と呼び、9.11直後に出版されたことで世界的なベストセラーになったそうだが、ではイスラムについて知識や関心がないと面白くないのかと言うと全然そんなことはない。パムクの巧妙さだ。冒頭、主人公Kaはカルスという貧しい地方都市に向かうバスに乗っている。道が見えなくなるほど激しく降る雪の中で、彼は無邪気に雪を見つめる。静寂を楽しみ、清められた世界にときめきすら感じている。そう、彼は政治亡命者ではあるけれど政治に深く関わったことはなく、「孤独を愛すはにかみや」の詩人なのだ。私たちは彼の感じやすい心に共鳴しながら、知らないうちにトルコの主義主張の異なる人々の衝突に「巻き込まれて」行く。

学生時代の友人である美しいイベッキが離婚したと聞いて、彼女を手に入れるべく下心を持ってカルスに向かったKaは、新聞記者と名乗った手前様々な人にインタビューして回るが、心は詩人だ。と言うより、無神論者であり日和見主義者でもある。人々の話に深くうなずき時に涙しながらも、決して同調はしない。できれば彼の孤独は癒されたのだろうけど...。文化人であり富裕層出身のため丁重に扱われるが、電話は盗聴されるし警察の尾行が付いている。この小説を読む私も、立場はKaと同じだと思った。Kaの目を通してこそ、イスラム社会を間近に客観的に見ることができる。

イスラム主義者、政教分離・西欧化主義者、軍のクーデター。人々は貧しく、テロリストは英雄扱いされる。少女たちは命をかけて髪を隠し(彼女たちの心情は「テヘランでロリータを読む」でなんとなく理解していた)、青年たちは自分が何をしているのかよくわかっていないまま命を落とす。貧しい民衆は煽動され易い。

カルスの街を深々と覆うのは雪、人々のやるせなさを包むのがKaの詩。雪も文学も普遍的なものであり、かつとてもはかない。詩が書けなくなっていたKaはカルスで次々に天啓を受けて次々に美しい詩を書いていくが、それらは1篇たりとも読者の目に触れない。美しいイベッキはKaと共にフランクフルトに行くことを了承するが、数年後Kaは孤独の内に死ぬ。雪が溶けたあとのカルスの街はとてもみすぼらしいだろう。政治・宗教・愛、いずれにも正解と言える道はなくて、永遠に平和なんて訪れないんじゃないかと思ってしまうのだが、そう言った信条みたいなものを追い求めるのが生きる情熱の源であり、そんな情熱を持たない人間は不幸せだとも思う。

読了後時間がたっているので距離を置いた感想になってしまったが、パムクの天才的な構成力と描写力(誤訳が多いようだが)により、今も瑞々しい切なさが残っている。カルスの風景が、絵画のように胸に焼き付いている。

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2007年12月31日

カラマーゾフの兄弟 (光文社古典新訳文庫) / ドストエフスキー

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキー 亀山 郁夫

光文社 2006-09-07
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カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキー 亀山 郁夫

光文社 2006-11-09
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カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキー 亀山 郁夫

光文社 2007-02-08
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カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキー

光文社 2007-07
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カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキー 亀山 郁夫

光文社 2007-07
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世界最高の小説を、異例のベストセラーとなった新訳で読む。

去年1987年版の「罪と罰」(新潮文庫)を読んだが(再読)特に読みにくさは感じなかったので、「カラマーゾフの兄弟」だって亀山郁夫さんの訳でなければ読めないということはないと思うのだ。でも「新訳が出たから」というきっかけでもないと、この長大な小説に挑戦する気になれなかっただろう。装丁がカワイイ。読書ガイドや前巻のあらすじなど載っているから、何だか安心して読み進められる。訳がいいだけじゃなくて、随所に工夫がある新訳本だ。最近書店に行ったら光文社古典新訳文庫のコーナーをチェックするようにしているが、雑誌じゃなくて本を買うような本屋で亀山「カラマーゾフ」を置いていないところはまずなくて、何だか安心している。ひとりでも多くの人に、この素晴らしい小説を読んでもらいたい。人間の叡智のほどを知りたければ、この本を見よ。ひとりの天才小説家がひとつの小宇宙を構築した。描かれる人間の魂はあまりに熱く激しい。翻弄された。

ドストエフスキーの小説は特に予備知識がなくても十分面白く読めるが、小説家の生涯を知っていると登場人物によりリアリティが感じられていい(第5巻に亀山先生の解説あり)。私は以前小林秀雄の「ドストエフスキイの生活」を読み、嫌気がさすくらい破天荒な放蕩ぶりにあきれてしまった。不快な言動で文壇の嫌われ者になるし不倫はするし借金のカタに小説を書くし。彼の小説の中の狂気が真に迫っているのは無理もないと思ってしまう。カラマーゾフ家の男達の特異さ、父フョードルの嫌らしさもミーチャの暴走もイワンの無神論者ぶりも、ドストエフスキーの分身として見れば自然とすら言えるキャラクターなのだ。では、純粋なアリョーシャは?いや、アリョーシャは純粋なのか?亀山先生の示唆によると彼の聖性は危険な資質でもあると...。この兄弟について語りだすとつい脱線してしまう。みんなすごい魅力的なのだ。

「カラマーゾフの兄弟」はドストエフスキーの遺作で(単行本の出版が1880年、ドストエフスキーは1881年没、享年59歳)、彼は更に壮大な続編を計画していたと言う。本編のあらすじはバラバラになっていたカラマーゾフの兄弟がそれぞれの思惑を持って父の家に集まり、一触即発の状態の中で遂に事件が起き、裁判が始まるというシンプルなもの。古典主義時代の交響曲の楽曲構成を意識したと言われる緻密で端正な全四部構成(+エピローグ)で、第1部は割とのほほんとした牧歌的なすべり出しではじまり、主要登場人物が次々と舞台に現れ伏線が張られて行く。第2部でもたいした事件は起きないが、脇役に至るまでキャラクターが生き生きと彩られていき、思想的にすごく濃いシーンが出てくる。影の薄かったイワンが熱く語り出す「大審問官」の物語。神の存在についての議論だ。ゾシマ長老は辞世に信仰の本質を語る。第3部は事件の連続、亀山氏はスケルツォの章と言う。ゾシマが亡くなってアリョーシャが変化し始める、グルーシェニカが昔の恋人のもとに走ってミーチャが狂う、フョードルは殺される。読んでいる方が遭難しそうになってくる大スペクタクルだ。ここまで来たらもう止まらない。第4部の裁判は圧巻で、最後の1頁を読んだ時には「え、これで終わり?」とつんのめってしまうような勢いがついていた。

ここまで結構長く書いたのだが、この小説の魅力を全然語れていないのでいやになる。「罪と罰」でもそうだけど、ドストエフスキーの宗教観は根源的で、キリスト教徒でなくても深くゆさぶられる。異常なまでに熱くなる登場人物たちは、抑制を振り払った自分の姿のように感じられる。エピローグのイリューシャの葬儀の章は、詩のように美しい。でも狂気が失踪し続けてきたようなこの物語自体が、崇高で美しく感じられるのはなぜだろう。

亀山氏がこちらをを出しておられるが、私は影響を受けやすいし臆病なので買うのをためらっている。

「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する (光文社新書 319)
亀山 郁夫
4334034209


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2007年9月16日

わたしの名は「紅」(あか)/ オルハン パムク

わたしの名は「紅」わたしの名は「紅」
オルハン パムク Orhan Pamuk 和久井 路子

藤原書店 2004-11
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2006年ノーベル文学賞を受賞したトルコ人作家オルハン・パムクの代表作のひとつ。受賞していなかったら、この本が書店で平積みされることはなかったろうから、私は出会えなかったかもしれない。検索すれば言及記事はたくさん見つかるが、ふだん読んでいるブログなどでこの名を見かけたことはない。藤原書店は1990年設立の骨太な出版社で、受賞以前に赤字覚悟でこの名作を出版している。良書を揃えているようだ。注目したい。

『わたしの名は「紅」』は、まずその装丁の美しさに惹かれた。手に取ってみると「細密画師の苦悩」とある。興味深い。『雪』を買うつもりだったのだが、作家の執筆順に作品を読むのが好きなこともあって、こちらを購入した。厚い。600頁以上ある。難しい小説なのだろうなあと思って、しばらく寝かせていたのだが...。

さて、いよいよ読み始めるぞと思って本を開くと、まず「日本の読者へ」という素敵な序文に出会う。作家は若い頃は画家志望だったのだそうで、それで絵画の世界に関心があるようだ。細密画師の姿を通して西洋以外の世界で生きる創造的芸術家の苦悩を描いたのだと言う。対比として中国や日本の絵画の伝統を「もう一つの天国」と呼び、西と東の融合を可能にした文化を賞賛している(作家は日本文学にも造詣が深いらしい)。くすぐったい。私は割と最近古い日本画を見に行くようになったのだが、こう客観的に評されると新鮮な興味が湧いてくる。

目次を見てびっくりした。「わたしは屍」「わたしの名はカラ」「わたしは犬」といった調子で59章までもあるのだが、同じ名前の章が何度も出て来る。目次を読んで話の流れを掴んでおこうとする目論みは無駄。次に親切にも「主な登場人物」「用語解説」のページ。そうかやっぱり予備知識がないと理解できない小説なんだなと、神妙に目を通す。ただし訳者あとがきにあったのだが、「註をつけるとエスニックとかエキゾチックととられる。普通の物語として読んで欲しい」という作者の意向で註をつけなかったそうで、冒頭に「用語解説」を持って来たのはちょっとした親切というところか。実際、読み始めると訳文の独特な語り口に慣れるまで少々の違和感は感じるが、非常に読み易い小説だった。意外なまでに。

16世紀末のオスマン・トルコ帝国の都イスタンブル、雪の九日間の物語。ひとりの細密画師が殺されたことに端を発する、一種のミステリー。第2の殺人まで起きて犯人探しが物語のひとつの軸となるが、凝ったトリックがあるわけではなく、事件は物語の素材に過ぎない。当時のトルコ人の生活様式(挨拶のキスとか食事とか冠婚葬祭のしきたりとか)、細密画師の工房の内部事情(子弟関係とか生活のための内職とか名人への道とか)、カラとシュキレとハッサンの三角関係(シュキレの微妙な女心の描写が絶妙)などが織りなす細部までリアルな、切り取られたひとつの世界。カフカ、プルーストと比較されることの多いというパムクの、技巧と構築力は素晴らしい。


以下私のお気に入りのシーン。
「わたしの名は紅」という章(これはひとつしかない)で紅色の絵具(!)が語る「色」の気持ち、そして盲目の名人の議論。

色であるのはどんなことか、とあなたが訊くのが聞こえます。
色は目が触れること、つんぼにとっては音楽、闇から出てくる言葉です。
「名人よ、紅を全く見たことのないものに、紅の感じを説明されよ」
「指先で触れると鉄と銅の中間で、手のひらにのせるとやけどする。味を見ると塩漬けの肉のようで満腹感がある。においを嗅ぐと馬のようなにおいがする。花の匂いでは、薔薇でなくて、雛菊に似ている」

クライマックス近く、スルタンの宝物殿で禁断の古い写本に片っ端から目を通す名人オスマンの、恍惚。ここは長いし読む人によっては冗長と捉えるかもしれないが、ことばで描かれたイスラム絵画芸術の真髄に酔った。イスラム絵画もイスラム教もよく知らないのだが、そんなことは関係ない。パムクは普遍的な物語として描いている。

こちらもそのうち...


オルハン・パムク 和久井 路子
4894345048

父のトランク―ノーベル文学賞受賞講演
オルハン・パムク 和久井 路子
4894345714

イスタンブール―思い出とこの町
オルハン・パムク 和久井 路子
4894345781

さらに、2004年の日本語訳出版記念講演会の記事を発見♪
国際交流基金>「東と西、過去と現在の狭間で−トルコ作家オルハン・パムクの世界」


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2007年7月 1日

囚人のジレンマ / リチャード パワーズ

囚人のジレンマ囚人のジレンマ
リチャード パワーズ 柴田 元幸/前山 佳朱彦

みすず書房 2007-05-24
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『舞踏会へ向かう三人の農夫』(1985)でデビューした現代アメリカ文学の代表的作家リチャード・パワーズの、長編第2作。5/24に発売されたばかりだが、アメリカでの発表は1988年。今年50歳になろうというパワーズが『舞踏会...』の成功と前後して20代で書いた、複雑で重厚で感動的な小説だ。

パワーズの作品は読むのに時間がかかる。この本は一ヶ月近くかかった(読むのはほとんど電車での移動中だけだったので)。何しろふつうの小説とは違う。彼は明らかに何かを仕掛けてきている。今回は平凡な家族の物語で、だじゃれは多いが既刊のごとき目も眩むような知識と教養のひけらかしはない。6人の家族たちは冗談ばかり言っている。でも油断しちゃいけない。ああ、パワーズは何が言いたいの...。読みながら悶々とした。

多層的な章構成にただただ従順について行く。家族の物語と、時折ささやかれる各人の独白。いつしかホブソンファミリーを結ぶ強い愛情が胸に刻み込まれる。老いた両親といい年して自分の家庭を持たない子供達。パパは原因不明の卒倒病で永らく職を失ったまま、健気なママが歯科衛生士をして家庭を支えてきた。末っ子のエディ・ジュニアを除いて、兄弟達は人付き合いが下手で友達の少ないタイプ。父親の病気のために各地を転々をしてきたせいか。内輪のジョークではやたら盛り上がるけど。家族物語の合間に第二次大戦当時のエピソードが切れ切れに挿入され、これが次第に大きな比重を占めていく。ウォルト・ディズニーが重要な登場人物として出現するが、実は虚構だったりする。

ラストでどんでん返しめいた種明かしが披露されるが、それはこの物語の方向を決定づけるものではない。この小説をどう読むか、は読者各人にまかされており、読み終わった今、私はやっと物語の入り口に立ったような気がしている。「囚人のジレンマ」問題。「僕たちはどこまで自由なの?」。選択するのは自分。じっくりと世界について考えたい。

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2007年3月 7日

ガラテイア2.2 / リチャード パワーズ

ガラテイア2.2
ガラテイア2.2リチャード パワーズ Richard Powers 若島 正

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stars2004年ぐっときた大賞。
starsオモシロイ
starsAIと感傷
starsツマラン

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1週間ほどかけて読了。1985年のデビュー作『舞踏会へ向かう三人の農夫』から8作の長編を出している米ポストモダン系注目作家だが、邦訳はまだ2冊。翻訳のペースとはこんなものなのだろうか。せっかく「パワーズ節」に乗ってきたところなのにもう読むものがない。次作まで柴田元幸センセイの『パワーズ・ブック』で渇望を癒すしかないが、この本だって2000年版とフルい。

私は話の長い人は大嫌いだが饒舌な人は好き。パワーズの硬質な多弁さはかなり好みだ。彼の頭脳には科学も文学も歴史も哲学も音楽も、ジャンルを問わず蘊蓄と呼べるほど濃い知識が詰まっている。それらを手品のようにひょいひょいと帽子の中から取り出して、語りたい物語に濃さを加えるのが彼流テクニック。イリノイ州出身、11-16歳までバンコクで暮らし帰国後イリノイ大学で物理学を専攻しながら突然文学へ転向し修士号を取得。卒後プログラマになるがボストン美術館でアウグスト・ザンダーの写真を見て処女作『舞踏会へ...』を執筆。オランダに移住してヨーロッパのあちこちを旅し、ケンブリッジ大で1年過ごしてイリノイ大学に戻る。本作は自叙伝的な作品なので、こんなパワーズの経歴と言うか心の風景が垣間見えてとても面白かった。

量子力学とか脳科学、などに興味を感じて最近科学系ノンフィクションを読むようにしているが、パワーズは私のような初心者の百歩先を行ってサイエンスの世界を文学の解釈に取り込んでいる。今作は「人工頭脳に英文学を教え込み、難解な修士試験に合格させる」というプロジェクトが主筋だが、実は内容はとてもセンチメンタルだ。作家の分身のようなキャラクターが物語の語り手となり、父親の思い出や過去の恋愛をフラッシュバックさせながら「意識」について自問自答していく。その過程はそっくり読者にフィードバックされ、自己の客観視を迫られてしまうというパワフルな小説(フィクション)なのだ。

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2007年1月31日

テヘランでロリータを読む / アーザル ナフィーシー

テヘランでロリータを読むテヘランでロリータを読む
アーザル ナフィーシー Azar Nafisi 市川 恵里

白水社 2006-09
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このタイトルが結構扇情的に思えて、イラン人女性が虐待される様が微に入り細に入り描写されているのかと身構えて読み始めたが、そういう面は抑えた表現で語られていた。著者は育ちの良い人らしいし、関係者への配慮もあるのだろう。もしくは、社会的抑圧の中で自分の精神を守るため、一種の逃避があったのかもしれない(私だったらそうする)。女性だけの文学研究会が主眼だが、回想はあちこちに飛ぶ。テヘランの市民生活の実態が描きたいのか、20世紀文学の素晴らしさを謳いたいのか、自分の心情を綴りたいのかよくわからないやや散漫な構成だが、アイスクリームにコーヒーと砕いたクルミをかけて食べるのが好きな著者の(美味しそう!)、女性的な内面に惹かれていく。彼女が「切実に」愛するナボコフ、フィッツジェラルド、ジェイムズ、オースティンの魅力的なこと!小説に感情移入し過ぎることは一種自己逃避のように思えて罪悪感を持っていたのだが、このように深く読み込み作品の真髄を抽出しようとする作業はとても建設的だと思った。子供の頃、文学の研究者になりたかったのだ、私は。結局著者はアメリカに移住する道を選びこの回想録はひとつの区切りを得る。読了してみればすべてが瑞々しく頭に残る、優れたドキュメンタリーだった。
P156:小説は寓意ではありません。授業時間が終わりに近づくと私は言った。それはもうひとつの世界の官能的な体験なのです。その世界に入りこまなければ、登場人物とともに固唾をのんで、彼らの運命に巻きこまれなければ、感情移入できません。感情移入こそ小説の本質なのです。小説を読むということは、その体験を深く吸いこむことです。

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2007年1月20日

カフカの友と20の物語 / アイザック・B. シンガー

カフカの友と20の物語カフカの友と20の物語
アイザック・B. シンガー Isaac Bashevis Singer 村川 武彦

彩流社 2006-06
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ポーランドからアメリカに移住し英語を第2の言語としながら、イディッシュ語で書き続けたアイザック・シンガーの短編集。作家自身が翻訳者と協力して英訳されたもの(の邦訳)。ユダヤ人の文化と英知を濃厚に描きつつ、社会にうまく適応して生きていけない人々の普遍的な苦悩や機微を鮮烈に抽出してみせる。童話めいたエピソードもあるが、物語全体はリアリティを失わない。さすがノーベル賞作家(当たり前だ)。
...それまで一度も聞いたことのない音でわたしは眠りから覚めた。わたしはオウムや、猿や、バナナのようなくちばしをした鳥の声を聞いたような気がした。開け放った戸から、オレンジの芳香が何の種類ともわからない果物や植物のにおいと混じり合って、漂ってきた。吹き入ってくるそよ風は太陽で温まっていて、エキゾチックな薬草の香りがしていた。
『植民地』から、東アルゼンチンの朝だ。美しい短編。どの作品のどこを切り取っても、このような生き生きとした描写に触れることができる。鋭い観察力を持った作家だ。

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2006年12月18日

文盲 アゴタ・クリストフ自伝 / アゴタ・クリストフ

文盲 アゴタ・クリストフ自伝文盲 アゴタ・クリストフ自伝
アゴタ・クリストフ 堀 茂樹

白水社 2006-02-15
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あの類いまれな『悪童日記』三部作の著者の、自伝。とても薄い本。そしてフォントも大きい。これが切ない。彼女は永らく新作を出しておらず(三部作の後の『昨日』(1995)以来)、すでに70歳を越え「書く」ことはしていないと言う。旧作より劣る新作は発表しないと明言しているらしい。この自伝自体執筆時期は1990年頃と推定され、つまり彼女の創作は途絶えそれが「永遠」になりつつあるのだ。切ない。小品だがアゴタ・クリストフらしい淡々と、重い文章が胸に響く静かな本。

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2006年11月18日

ティンブクトゥ/ ポール・オースター

ティンブクトゥティンブクトゥ
ポール・オースター 柴田 元幸

新潮社 2006-09-28
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全部(いやほとんど)読んでいるお気に入り作家の筆頭オースターの、日本語版新作。図書館に籠って『ミスター・ヴァーティゴ』を読んだのがたしか去年の秋、お久しぶりねだ。勿体ないから購入してからしばらく寝かせておいた。本当の最新作『The Brooklyn Follies』も実は持っているが、こっちは8月に買ったので更に熟成が進んでいる。『Never Let Me Go』と共に。 さてオースターの小説ではよくあることだが、今回も(特に前半の)登場人物が極端に少ない。でも浮浪者ウィリーの飼うイヌが語り手なので、世界が狭い事に違和感は感じない。と言うかそれが狙いか。二人の間の愛情は濃密だ。本のオビにある「オースターの最高傑作ラブストーリー」というのはキャッチー過ぎる気がしたが、的外れでもないわけだ。私は以前からオースターは「愛」の作家だと思っていた。どの作品にも根底に彼自身が放出するの無限の愛情を感じるのだ。たくさん愛せる人こそ強い人だと思う。...『ティンブクトゥ』の感想に戻ると。イヌにどこまで感情移入して良いのかわからなかったが、ウィリーがいなくなってからミスター・ボーンズに気持ちを集中できるようになった。いったん一体化してしまうとあとは怒濤のラストまで一気。そして今しみじみとはじめから読み直している。続けて2回読む小説なんて滅多にない。読めば読むほどなーんだここにもツボなフレーズがあったよと、オースターの筆の巧みさに唸らされる。ウィリーは詩人だから韻が多い。原文で読めればねえ。もっと近づけるのに。この小説は単なる物語ではない。

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2006年8月25日

罪と罰 / ドストエフスキー

罪と罰 (上巻)罪と罰 (上巻)
ドストエフスキー

新潮社 1987-06
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罪と罰 (下巻)罪と罰 (下巻)
ドストエフスキー

新潮社 1987-06
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読了してから気付いたけど、1度は読破していた(最後に近いシーンが記憶に蘇った)。以前は「冗長」という印象を持ったに違いないけど、今回は小林秀雄著『ドストエフスキイの生活』を1/3くらい読んであったので、文豪個人に対する好奇心をバックに結構面白く読めた。主人公がいくら苦悩しても、「さー、どこまで落としてどんなことを言わせるのかな?」と余裕。大人と言うか可愛げのない読み方だと思うが、それでも流刑先でソーニャと心を通い合わせるシーン(=救済)では純粋に感動して宗教に対する憧れを感じた。私は無宗教だ。また、やや軽薄な日本の現代小説に食傷気味なので、こういう19世紀ロシア文学の大袈裟なところや土臭さが新鮮だった。

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2006年8月14日

異邦人 / カミュ

異邦人異邦人
カミュ

新潮社 1954-09
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再読。主人公ムルソーは嘘がつけないことで「異邦人」として疎外される。無気力な彼の言動に共感を抱いてしまった自分はいかがなものかと思う。もちろん暴力は避けるしちょっとは野心があるけど。後半のムルソーの研ぎすまされた五感の描写が、非常にリアルだ。選ばれた無駄のない言葉たち。やはり鮮烈な小説、また読みたい。

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2006年8月13日

カメレオンのための音楽 / トルーマン・カポーティ

カメレオンのための音楽カメレオンのための音楽
トルーマン カポーティ Truman Capote 野坂 昭如

早川書房 2002-11
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あとがきで、ペドロ・アルモドゥバル『オール・アバウト・マイ・マザー』(映画)でセシリア・ロスが作家志望の息子に贈った本がコレと知って、感激した。好きなもの達ってリンクし合っているのだ。この短編集は『冷血』後永らく輝きを失ったカポーティが渾身の力でたたき出した一冊と聞いたが、そういう重さは感じられない。洒脱な掌編、対話形式を多用したノンフィクションらしきレポート、ちらりと狂気が見え隠れする独り言。高いレベルで小説の形式実験がなされている。やや映画的。

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2006年8月12日

失踪者―カフカ・コレクション / フランツ・カフカ

失踪者―カフカ・コレクション失踪者―カフカ・コレクション
フランツ カフカ Franz Kafka 池内 紀

白水社 2006-04
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『審判』『城』とともに「孤独の三部作」と呼ばれる連作の第一巻。従来『アメリカ』という表題で知られていた作品だが、本コレクションでは、カフカ自身の命名によるタイトルに戻されている。
冒頭の『火夫』だけ他の本に似たものが収録されていたので、ほぼ既読。あとはカフカ風青春小説といった新鮮な趣だった。主人公が青年なので。『審判』『城』に較べると不条理具合が甘ゆるくてストレスを感じない作品だった。妙に要領良くてポジティブなカール青年、カフカ自身もあんな感じで昼間の事務職を全うしていたのだろうか。ん、つまりある意味自伝的な作品なのかな?視点を変えるとまた面白さが増す。

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2006年7月 5日

インディアナ、インディアナ / レアード・ハント

インディアナ、インディアナインディアナ、インディアナ
レアード・ハント 柴田 元幸

朝日新聞社 2006-05-03
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柴田元幸先生イチオシ(?)なので読んでみた。まず目次を見て、童話系と判断。童話って残酷な要素が隠れていることが多い。読み始めて最初の印象は「字が大きい」。はは。いきなりノア(主人公)視点で物語が始まるけど、ノアは不思議系の人なので、心を穏やかにして幼子の言葉を聞くように慎重に真剣に彼の声に耳を傾けなくてはいけない。彼は老人なので回顧が多いし、更に死者とお話したりするから、時系が混乱しがち。一生懸命彼の話を聞いていたら、知らない内にインディアナの風と匂いと木々のざわめきなんかが胸に染み付いてしまった。ノアは失ったものを深く愛し失ったという事実から目を反らさない。レアード・ハントは愛という目に見えない切ないものを、斬新なやり方で浮かび上がらせたように思う

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2006年7月 2日

シカゴ育ち / スチュアート・ダイベック

シカゴ育ちシカゴ育ち
スチュアート・ダイベック

白水社 2003-07
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短編小説と、もっと短いショートショートが混在。めりはりがあって読みやすい。リアルな日常と架空の世界のブレンド具合が絶妙で、読んでいる自分の立ち位置を見失ってしまう。なので連作『熱い氷』では何がどうなっているのかわからなくなってしまって、必死で読み返した。何がどうなる、という話ではないんだけど。結局、ダイベックは詩人なんだなあと思った。これは小説ではなくて散文(詩)。だから荒廃した街の貧しい若者の野放図が美しくて、ブギウギなショパンが切なくて、ペット・ミルクが真実なのだ。

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2006年6月24日

私自身の見えない徴 / エイミー ベンダー

私自身の見えない徴私自身の見えない徴
エイミー ベンダー Aimee Bender 管 啓次郎

角川書店 2006-03
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エイミー・ベンダー初長編、童話のようでありながらするどい物語だ。20歳になったモナは変わっている。多分失うのが怖いから、好きなことは何でも自分で止めてしまった。可能性をみんな封印して、自ら色褪せてしまった。閉ざした世界の安全さを確かめるように、絶えず木をノックする。数字は変化しないから、算数の先生になることは自分に許した。でも自分が自分であり続けることは不安。いっそ手も足も頭も斧で切断してしまいたい、そんな誘惑に負けそうになる。...でも負けなかった!彼女に未来を与えたのは何だったのだろう。私もそれを手にすることができるだろうか。読むと結構内省的になってしまう。でもこういう切なさは気持ちいい

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2006年6月18日

舞踏会へ向かう三人の農夫 / リチャード パワーズ

舞踏会へ向かう三人の農夫舞踏会へ向かう三人の農夫
リチャード パワーズ Richard Powers 柴田 元幸

みすず書房 2000-04
売り上げランキング : 159122
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3人の青年が並ぶ古い1枚の写真を巡って物語は展開する。とても自由に。リチャード・パワーズの頭の中の宇宙は広大であり、博識ぶりは満点の星。写真て何?という問いは小説って、に置き換えられる。文体は軽妙で時に吹き出してしまうような描写もあるけど、急ぎ足で読了してみてわかったのはまだ何も把握できていないということ。優れた絵画のように、見つめる程に心の中に何かが焼き付けられる。要再読

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2006年6月 8日

燃えるスカートの少女 / エイミー・ベンダー

燃えるスカートの少女燃えるスカートの少女
エイミー・ベンダー

角川書店 2003-05-30
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最近のアメリカ文学においてはこういう脈絡のない、でもドキッとする鮮烈な小説を書く女流作家が増えているんだとか。私は「乙女系」と呼んでいる。たしかに切ない。奇妙なのに共感を覚える。既視感がある。残酷だ。優しさと愛しさに胸が震える。古傷をえぐられる。心を波立てられることが「感動」ならば、この矛盾した幾多の感情を呼び覚ます小説達はいい線をいっている

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2006年5月22日

スペシャリストの帽子 / ケリー リンク

スペシャリストの帽子スペシャリストの帽子
ケリー リンク Kelly Link 金子 ゆき子

早川書房 2004-02
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正直言って途中で投げ出そうかと思った。バロウズの『裸のランチ』じゃないけど、話に脈略がないのである程度の集中力がないとついていけない。でもやれやれと思いつつ読み進めていると、すごく「懐かしい」感じに囚われたりする。結局読了してからぱらぱらとページをめくり返し、なんだどれもいい話じゃないと評価上方修正。手元に置いて何度も読み返したい、詩集のような本だ

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2006年5月14日

わたしを離さないで / カズオ イシグロ

わたしを離さないでわたしを離さないで
カズオ イシグロ

早川書房 2006-04-22
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滅多に出会えない特別な一冊。 今回の語り手は女性。まだ31歳なのになんだか達観している。プロの介護人という職業柄かしら。介護人と言えば、アルモドゥバルの『トーク・トゥ・ハー』(ASIN:B00018GZ0A)を思い出すな。 ..こんな感じで静かに物語に入っていった。彼女の綴る思い出は思春期、13歳くらいを核に前後にフラッシュバックする。芯はしっかりしてて、でも感受性が強いせいで妙に臆病なところもある聡明なキャシー。空気を敏感に読むタイプで、特にトミーとルースに対する観察眼は天下一品だ。ヘールシャムという小宇宙で世界の規律を学び未来に向かって着実に歩んで行く。いい感じ。 キャシーは泣かない。人に迷惑をかけない。あわてふためかない。情に流されない。空想に耽ったりしない。どうだろう。ちょっと非人間的になってきた。でもちゃんと愛を知り喪失を識る、ひとりの女性だ。ノーフォークの風の中で彼女の中に一瞬湧き上がった感情のうねりは、重くストレートに私のおなかに直撃した。心臓が痛かった。 イシグロ氏はいつも、細心の注意を払ってシチュエーションを弄びつつ、私たちの中にある無数の「人間」の姿を引き出してくれる

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2006年5月 7日

充たされざる者 / カズオ イシグロ

充たされざる者〈上〉充たされざる者〈上〉
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro 古賀林 幸

中央公論社 1997-07
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充たされざる者〈下〉充たされざる者〈下〉
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro 古賀林 幸

中央公論社 1997-07
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読み始めてすぐ気付くけど、カフカ的な不条理系の小説だ。でも私はカフカを読んでいると、どこに連れて行かれるのかわからないことに強い不安感を感じるのだけど、イシグロだとどこまで付いて行ってももいいなと委ねる気持ちを持てる。読者の感情の動きを事前に察知して、巧妙に匙加減しているのではないだろうか。 例えば主人公は度々睡眠や食事を邪魔されるんだけど、それが永遠に続くことはなくてそのうちぐっすり眠ったりまあまあな食事を摂ったりすることができる。寒いとか足が濡れたとか、不快な状況は場面転換と共に消える。礼儀正しかった人物が突然豹変して怒鳴ったりするけど、その次にはけろっと冷静で理知的な態度を取りはじめる。リセットの連続だ。何が起きても慌てる必要はない。素直に物語に没入して、その時々に湧き出す感情に身を任せていれば良いのだ。 そして、めまぐるしく様相の変わる主人公をはじめ登場人物達の会話や表情は、ひとつひとつがとてもリアルで共感を持てる。親子、夫婦、仲間、他人。人間関係における喜びや問題。私は特にコミュニケーションの難しさについてあらためてしみじみ考えさせられた。 きっと作家は狙っているんだと思う。複雑でわかりにくい物語だけど、どこまでも緻密に作り込まれているはず。長い作品だけど、決して冗長ではない。ふところ深くあらゆる読者の心が共鳴し得る要素を、無数に取り込んであるのだ

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2006年5月 3日

浮世の画家 / カズオ イシグロ

浮世の画家浮世の画家
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro 飛田 茂雄

中央公論社 1992-04
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今その回顧展が非常に人気の、藤田嗣治を意識せざるを得なかった。それはそれとして。 戦後の日本を、イギリス人であるイシグロ氏を通して知るというのは妙な話だが、読んでいると「なるほど〜」と納得してしまう。いやその描写が正確なはずはないのだが。イシグロ氏に自伝を書いて欲しいと思った。日本を離れてから故国をどんなふうに見ていたのか、彼の目を通した両親の姿、得られた情報、など興味がある。 人の本音ってわからないし、そもそも自分の感情すらどう動いていくか予測できないものだ。だからイシグロ氏の「語り手」の言葉に虚が混じるのは当然。それがわかっていても氏が描く戦後の日本にちらちらと差し込む光を、はっきりと感じることができる。リアリティって何なのだろう(以上わかりにくいけど、この作品を絶賛している)

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2006年5月 1日

遠い山なみの光 / カズオ イシグロ

遠い山なみの光遠い山なみの光
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro 小野寺 健

早川書房 2001-09
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カズオ・イシグロ氏のデビュー作! 思い出を語る女性の一人称の形式で、静かに淡い色彩で進む物語。会話が主体のため読者が想像力を働かせなくてはならない部分が多く、結果として奥行きが深くなっているようだ。直接登場しない人物の心境にまで、無意識に思いを巡らせていた。主人公の意識が現実と過去を行ったり来たり(時に思い出の道草をして)するのに合わせて時間軸が変移するのがイシグロ氏らしい。いつの間にか自分の胸の内の物語であるかのように、錯覚させられてしまった

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2006年4月23日

わたしたちが孤児だったころ / カズオ・イシグロ

わたしたちが孤児だったころわたしたちが孤児だったころ
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro 入江 真佐子

早川書房 2001-04
売り上げランキング : 125,089
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素晴らしい。強い磁力を持った小説。図書館で見かけてたまたま手に取った本だが、出会えて本当に良かった。『日の名残り』のように抑制の利いた繊細で丹念な描写、無心に追っていくうちに自分がどこにいるのかわからなくなってしまう。「信頼できない語り手」に見事騙されてしまうのだ。 探偵となった主人公の交錯する記憶、失われつつある少年時代の光景がフラッシュバックする。巧みに操られる時間軸のループに読み手は絡めとられてしまう。ひとつひとつのエピソードが郷愁に満ちていて美しい。いつの間にかまわりの景色から現実性が失われるんだけど、いつそうなったのかわからないし今更抜け出せない。両親を見つけなくては。 ラストの収束がまた魔法のよう。現実的と言えばそうなのだけど、現実を捕まえるって結構難しいことだ。主人公は(そして読者は)自分なりの平穏を見出す。 私はこの主人公のようなシュールな追いかけっこの夢をたまに見るのだが、理由がわかったような気がする

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2006年4月 6日

ブロークバック・マウンテン / E・アニー・プルー

ブロークバック・マウンテンブロークバック・マウンテン
E・アニー・プルー 米塚 真治

集英社 2006-02-17
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映画が良かったので原作はさぞかし、と思って読んでみた。フォントが大きいのでびっくりした。元々短編小説なんですね。
うーん映画から起こした説明本みたいな感じ。

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2006年2月 5日

自負と偏見 / J. オースティン

自負と偏見自負と偏見
J. オースティン Jane Austen 中野 好夫

新潮社 1997-08
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キーラ・ナイトレイ主演でロードショー公開中の映画「プライドと偏見」の原作。映画が良かったので読んでみた。オースティンはヴィクトリア朝期の高名な女流英作家ですが、退屈なイメージがあったので読むのは始めてです。うーん、原作を愛している方達は映画は内容を端折りすぎていると思われるようですが、私的には結局映画のイメージの方が勝ちました。たしかに漱石も絶賛したという書き出しは実に巧みで、全体の描写も軽妙でリアルなのですが。先に観た映像のインパクトが強かったのですね。

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2005年12月29日

カフカ寓話集 / カフカ

カフカ寓話集カフカ寓話集
カフカ 池内 紀

岩波書店 1998-01
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最近カフカを読むようになりましたが、短編はシンプルであんまり悩まずに読めるので楽です。楽なんだけど、かえってカフカが好きになりました。この本は寓話集と名付けられたくらいで、風刺的な内容が童話っぽく語られるので、一話ごとの印象が強かった。

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2005年12月18日

変身・判決・断食芸人 ほか二編 / フランツ・カフカ

変身・判決・断食芸人 ほか二編変身・判決・断食芸人 ほか二編
フランツ・カフカ

講談社 2000
売り上げランキング : 1,530,581

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実際に読んだのは岩波文庫の「変身・断食芸人」です。山下肇氏の旧訳をご子息の萬里氏が改訂・改訳したという2004年版。カフカは生前作品を発表することを好まず遺稿は破棄するよう親友に遺言していたが、親友マックス・ブロート氏は逆らって名作達を世に出した。「変身・断食芸人」はカフカ自身が発表した数少ない短編で、「城」「審判」などに較べると淡泊で読みやすい、けどほろりと来る小さな宝石の様な作品でした。
ちなみに私は超虫嫌い、「変身」を読むのは生理的につらかったけどグレゴールに同情できたので読み通せた。

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2005年10月21日

偶然の音楽 / ポール・オースター

偶然の音楽偶然の音楽
ポール オースター Paul Auster 柴田 元幸

新潮社 2001-11
売り上げランキング : 19,872
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オースターは単なる夢見おじではなかった。カフカ節が浮上し、不条理な世界に自ら嵌り込む主人公が強烈に共感を呼ぶ。
悲劇とか「うまくいかない」話って、嫌いだった。でもコレは違う。ナッシュ(主人公)は極限まで自分を解放しきって、好きこのんで追い詰められていくからだ。ストイックもとことんやれば趣味の世界と言うか。こういう破滅の仕方もある。憧れすら感じた。

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2005年10月19日

ムーン・パレス / ポール・オースター

ムーン・パレスムーン・パレス
ポール・オースター 柴田 元幸 Paul Auster

新潮社 1997-09
売り上げランキング : 19,765
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代表作と言われる作品。独特な語り口で「青春」を切り出し、見事に心を持っていってくれた。現実的なお伽話。
オースター読みも佳境に入って来た。青春小説と言えば中学生の時に読んだヘルマン・ヘッセの「春の嵐」を思い出す。読み終わったあと異様に高揚して、自分はこんなに感受性が強くて(笑)この先大丈夫なんだろーかと心配したものだ。ヘッセとオースターを並べるのは非常に変なのだけど、ともに稀代のストーリー・テラーってことで。
あり得ないことが次々に起きるのに全部しっくりくる。どん底の状況でもユーモアがある。切なさもちゃんとある。

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2005年10月12日

城 / フランツ・カフカ

城
フランツ カフカ Franz Kafka 前田 敬作

新潮社 1971-04
売り上げランキング : 14,058
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饒舌な小説だ。登場人物は皆よくしゃべる、なのに何も明らかにならない、進展しない。「不条理」のカフカなのだ。
ポール・オースターのエッセイで知ったけど、カフカは生前ほとんど作品を発表せず、死後は原稿を破棄するよう希望していた。遺された親友の尽力で偉大な作品達が世に出たそうだ。勿体ない!
読むことに没頭していると脳がゆっくりと揉まれている感じがする。未完とも言われているけど、斬新な結末でもある。

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2005年10月10日

その名にちなんで / ジュンパ・ラヒリ

その名にちなんでその名にちなんで
ジュンパ・ラヒリ 小川 高義

新潮社 2004-07-31
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「停電の夜に」で華々しくデビューした才媛の2作目、今度は長編。ひとことで言って、素晴らしいです。
アメリカのインド系移民2世代(脇役として祖父母も登場するので、3世代と言ってもいいかな)の軌跡を描く珠玉作。テーマは「愛」と「家族」かなあ。民族性が輪の中心というわけでは決してないです。ひとりの人間の内面が成長の過程でこれだけダイナミックに変わるのか!と感動せずにはいられない、ラヒリの丹念で繊細な描写の見事さ。

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トゥルー・ストーリーズ / ポール・オースター

トゥルー・ストーリーズトゥルー・ストーリーズ
ポール・オースター 柴田 元幸

新潮社 2004-02-26
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今私がはまりまくっているオースターの、 エッセイ集 。好きな作家のエッセイはたまらなく良いもの。
ホントこの人の放浪癖と、「偶然の連鎖」好きには感心します(読めばわかる)。まあ人生なんて全部自分で組み立てなきゃいけないと思うとしんどいですから、時には偶然の出来事が通り過ぎるのを目を見張って眺めるのも楽しいですね。どこかで「よい物語を語るのに必要な根気」という言葉が出てきて、オースターの小説がなんで素敵なのか、ちょっとわかったような気がした。

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2005年10月 8日

ミスター・ヴァーティゴ / ポール・オースター

ミスター・ヴァーティゴミスター・ヴァーティゴ
ポール オースター Paul Auster 柴田 元幸

新潮社 2001-12
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リヴァイアサンより後の長編、装丁を見てわかるように一種のファンタジーだ。空中浮遊する少年の話。
でも!アメリカの小説らしく主人公の晩年まできっちり描かれるから、最後は老人の物語(笑)。なんでとことんまで追うかなあ、「落とし前」?終末は平穏に終わるけど、やっぱりオースターだから読後に残るものは深いし瑞々しい。琴線が派手に震えてぶーんと唸り続けた。

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鍵のかかった部屋 / ポール・オースター

鍵のかかった部屋鍵のかかった部屋
ポール・オースター 柴田 元幸 Paul Auster

白水社 1997-12
売り上げランキング : 331,819
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NY3部作ラスト。一番物語っぽい構成で起承転結きっちりついているのですが、やっぱり最後に残るのは謎。
オースターが、追う「僕」と追われるファンショーに二分裂したような感じだ。緻密で結構遠大、でも飽きずに、というか小説世界から離れることができずにするすると読み切ってしまった。で、落ち着いたところでうーんと考え込んでしまう。小説を書くって自分を失っていくことなのかな。創作というのは、このくらいのハイレベルになると代償が大きいのでしょう。使い果たしてゼロに近いところまで沈下して、で、リセット・再生。書けなくなるまで。

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最後の物たちの国で / ポール・オースター

最後の物たちの国で最後の物たちの国で
ポール・オースター 柴田 元幸 Paul Auster

白水社 1999-07
売り上げランキング : 31,625
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これはNY3部作の次の作品。ちょっと毛色が変わっていて、舞台は架空の国。
まるでカフカです。不可思議な、不条理な世界。オースターはカフカが好きなんじゃないかな。私は彼のエッセイがきっかけで今「城」を読んでいるわけだし。女性の独白に終始する文体は珍しいし、シニカルな寓話です。オースターがユダヤ系アメリカ人であることがリアリティを支えている?ああでも暗いとは思わなかった、とても好き。

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2005年9月30日

停電の夜に / ジュンパ・ラヒリ

停電の夜に停電の夜に
ジュンパ ラヒリ Jhumpa Lahiri 小川 高義

新潮社 2003-02
売り上げランキング : 11,211
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このインド系作家の デビュー短編集 だが、評判通り秀逸。鮮烈。頻繁に出てくるインド料理はスパイシーで食欲をそそる。
「短篇」と言う小説の形態に意義を感じた。各編に完結した世界があって、読者は違和感なくそこに入って行って人物達の感情の機微に同調できる。そこはかとない、うまく言い表わせないような心の底の波立ち。そんなものをこの作家はそっと差し出してくれるのだ。この才能ならたぶん長編(もう出ている)もイケるんじゃないかな。完成度はかなわないとしても。

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2005年9月29日

シティ・オヴ・グラス / ポール・オースター

シティ・オヴ・グラスシティ・オヴ・グラス
ポール・オースター 山本 楡美子 郷原 宏

角川書店 1993-11
売り上げランキング : 47,632
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待望の 1冊、昨日図書館で見つけて一気読み。「幽霊たち」と違ってちゃんと名前も個性もある人物達が登場するが、結局最後には傍観者だけ残る。ひとりの作家を追いかける醍醐味は、彼の固執するイメージ・世界観が外見をわずかに変えながら繰り返しデジャブのように襲ってくるのを、体で受け止めることなのかなあと思った。わかりにくい!?

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2005年9月27日

幽霊たち / ポール・オースター

幽霊たち幽霊たち
ポール・オースター 柴田 元幸 Paul Auster

新潮社 1995-03
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とても薄い本なので、朝夕の通勤電車で読破してしまった。出会えたことに魂が震えた、至福の一冊。
オースターはこの夏「リヴァイアサン」を読んで気に入ったため、初期作品「空腹の技法」「孤独の発明」をまず読んだ。好きな作家は執筆順に読みたくなるのが人情です。「幽霊たち」はこれらに次いで発表されたニューヨーク三部作の二番目にあたる。一番目の「シティ・オブ・グラス」を飛ばしてしまったのは、新潮文庫に入っていなかったから。存在に気付かなかったのだ。新潮版「ムーン・パレス」と「偶然の音楽」はもう買ってあるんだけど、やっぱり順番守りたいので、NY3部作の2編をゲットするまではお預けです。

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2005年9月23日

最後の瞬間のすごく大きな変化 / グレイス・ペイリー

最後の瞬間のすごく大きな変化最後の瞬間のすごく大きな変化
グレイス・ペイリー 村上 春樹

文藝春秋 2005-07-08
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村上春樹氏が翻訳された、アメリカの女流作家の短編集。ひとことで片付けちゃうと、ハルキっぽい。
最近ポール・オースターが気に入ってぽちぽち読むなど、アメリカの小説づいている。その前はデニス・レヘインだったし(ミステリーだけど)。このペイリー女史は3冊の短編集しか出していない大作家(83歳)で、癖の強い文章は難解と言われているそうだ。「ハルキ」の名前で買った。ミラン・クンデラみたいな(?)難解さじゃなくて、語り手の意識があちこちに飛ぶし時々ふざけたりするので、ぴっちり着いて行くには集中力が必要だ。電車で切れ切れに読んだので、全然だめ。心静かな時に読み返すとはまるかもしれない。次の翻訳も、文庫になったら買います。

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