- 西山喜代司
- ソフトバンククリエイティブ
- 945円
livedoor BOOKS
書評/サイエンス

2006年10月に創刊された、ソフトバンククリエイティブ株式会社の「サイエンス・アイ新書」(特設サイト)の1冊。科学とITをテーマに、サイエンス系に特化したシリーズらしい。即効性がありそうだ。ナノテクノロジーというトピックには非常に興味があったので、わくわくしながら読み始めた。素晴らしい。簡潔な文体で段階的にナノテクに関する知識を与えてくれるのだが、豊富な図解と2種のキャラクターの噛み砕いた解説が更に理解を助けてくれる。冗長さがないところが良い。
ナノはマイクロの千分の一。マイクロはミリの千分の一で、歯科ではマイクロエンドとかマイクロサージェリー(20倍くらいの顕微鏡を使う)が流行っているが、更にはるか上の世界だ。いや歯科でも材料の理工学的性質の向上がハイエンドな治療を産むわけで、ナノテクノロジーの恩恵は十分受けているはず。材料屋さんにもらった職場のカレンダーに「ナノテク云々」と書いてあった。再生医療などにおいて検証に絶対不可欠な走査型電子顕微鏡(SEM)も、ナノの世界だ。
さて本書の内容。印象に残った部分を抜粋する。
第3章 炭素は結晶構造で姿を変える
炭素はナノテクノロジーを象徴する素材のひとつである。シャーペンの芯もダイヤモンドも炭素の構造物だ。シャーペンの芯はグラファイトであり、結合強固な平面状原子配列を成すが面間の結合は弱く、結晶全体としては剥がれやすい。剥がれたものが紙にこびりつく。わかりやすい!注目のカーボンナノチューブを発見したのはNECの飯島澄男氏。鉄よりもはるかに強くはるかに軽い夢の素材だ。顕微鏡の探針として使えばより精密な観察ができる。半導体デバイス、次世代大型ディスプレイ、クリーンで駆動時間の長い燃料電池などが開発中とか。
第4章 情報技術とナノテクノロジー
ナノテクノロジーは加工精度の高さにより半導体技術のブレークスルーとなる。単一電子メモリ(電子1個を制御する)は今では考えられないくらいの大容量メモリを可能にする。単一トランジスタは高性能低消費電力のコンピュータを実現。磁気ディスクの高密度化、次世代大容量光ディスク。分子コンピュータにDNAコンピュータに超高速量子コンピュータ!いやあもうSFの世界としか思えない...。
第5章 バイオテクノロジーへの応用
バイオテクノロジーへの応用は更に素晴らしい。DNA解析チップ使った遺伝子解析で個人個人に合った医療が可能になる。ナノスケールのマイクロカプセルで、ドラッグデリバリーシステムを。バイオチップで体内の異常の早期発見。そして再生医療。ナノテクが癌を撲滅してくれるかもしれない。
気になったこと。アメリカでは2000年にクリントン前大統領が国家ナノテクノロジーイニシアチブ(NNI)というナノテク戦略を打ち出し国家政策としたため、普通の人でも量子力学の知識や関心が高いのに対して、日本ではほとんど関心が持たれていないと言う。半導体を核とした技術では日本は今なお世界最高水準のレベルにあると言うが、裾野の私たちももっと興味を持つべきではないか。
