東京文化会館で英国ロイヤル・バレエ団の公演「うたかたの恋」初日を観てきた。「リーズの結婚」に続いて映像を含め初見の作品だが、DANZAに詳しい解説が載っていたのでプログラムと併せて事前の予習はばっちり。と言ってもバレエに大切なのは音楽なので、その辺が甘い私はまだまだなのですが。
ヨーロッパの名門貴族ハプスブルグ家の皇太子であり、名高いエリザベート皇后の息子、ルドルフの心中事件を題材にしたマクミランの傑作「うたかたの恋」が、23年ぶりに日本に登場します!
無名の男爵令嬢と共にマイヤーリングで突然の死を遂げたルドルフの悲劇は、数々の書物や映画でも有名。その死の真相は、いまだに謎とされています。
なんていうか、バレエをみたと言うより史劇を鑑賞した感じだ。だってルドルフはふつうの王子様ではなく、オーストリア帝国の実質的な「最後の」皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とヨーロッパ一の美貌を謳われたあのエリザベートの息子なのだ。昨年秋に国立新美術館で開催された「ザ・ハプスブルグ」展、あのお宝の出元はウィーン美術史美術館(とブタペスト国立西洋美術館)。ヨーゼフ1世が創設した超名門美術館ですよっ。皇帝・皇妃の肖像画やデューラー、クラナッハ・・・。今思い出してもクラクラしり展覧会だった。今回のロイヤル・バレエの舞台でも舞台装置として王族の肖像画が多用されていたが、とにかくすごい一家なのだ。彼らの生涯をバレエで描くって、それはムリ。なのにマクミランはやってしまった。
舞台冒頭のシーンでしめやかに埋葬されるのは17歳の男爵令嬢マリー・ヴェツェラ。彼女は皇太子ルドルフとマイヤリングで心中したのに、その事実を隠蔽するため30時間放置されてからハイリゲンクロイツの墓地に埋葬されたのだが、ラストシーンで再びこの墓地が出てくるまではその状況の異様さ(死体が生きた人間のように馬車から降ろされる)はぼかされている。背景を知らなければ観客にはわからないような、さりげない描写ではあるが。この舞台全般、史実またはクロード・アネの原作小説を知らないときつい感じ。助けは音楽と、ダンサーの表現力。
ルドルフのカルロス・アコスタは濃かった。顧みられない母への思慕とか上手に演じていたけど、後半の振付けが変態ちっく。まあ死に至る狂気を描くのだから、エキセントリックでないとね。元々の顔立ちが濃いのは、仕方がない。でもタフだし立派なダンサーだった。
ラリッシュ伯爵夫人のマーラ・ガレアッツィは、うーん出番が多過ぎて印象的なダンスがない。場を進めるために忙しく立ち回っていた。ルドルフに対して一途な感じ。彼女は別の日にマリーを演じるのだが、17歳をどうやるのか...。
そして素敵だったのはマリー・ヴェッツェラのロホ!!
汚れを知らぬ少女からルドルフの熱い思いを受け止める妖艶な恋人まで、その変幻ぶりは自在。苦悩や感情の荒ぶりを表現するためルドルフのリフトは結構無茶っぽいんだけど、ロホの肢体には不安定さはみじんも見られない。大体横顔とか表情とか可憐だし肌は白くてもちっとしてるし、1974年生まれだかダンサーとしてはベテランの域に入る筈なんだけど、瑞々しい!今までご縁がなくて全幕で見る機会がなかったんだけど、演技力もあるから「オネーギン」のタチアナなど見てみたいと思った。
演出としては「四人のハンガリー高官」がルドルフへの精神的なプレッシャーとして象徴的でわかりやすかった。舞台が宮廷なので、日常茶飯的にパーティーがあって衣装がエレガントでゴージャスなところがロイヤルっぽくて良い。生ピアノをバックに皇帝の愛人役の歌手が独唱するシーンは、声がとても美しくて、思わぬ贈り物をもらった感じ。等見所はたくさんある。
◆キャスト◆
ルドルフ:カルロス・アコスタ(オーストリア=ハンガリー帝国皇太子)
男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ:タマラ・ロホ(ルドルフの愛人)
ステファニー王女:イオーナ・ルーツ(ルドルフの妻)
オーストリア=ハンガリー帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ:クリストファー・サウンダース(ルドルフの父)
エリザベート皇后:クリステン・マクナリー(ルドルフの母)
伯爵夫人マリー・ラリッシュ:マーラ・ガレアッツィ(皇后付きの女官、ルドルフの元愛人)
男爵夫人ヘレナ・ヴェッツェラ:エリザベス・マクゴリアン(マリー・ヴェッツェラの母)
ブラットフィッシュ:リカルド・セルヴェラ(ルドルフの個人付き御者、人気者の芸人)
ゾフィー大公妃:ウルスラ・ハジェリ(フランツ・ヨーゼフの母)
ミッツィ・カスパー:ラウラ・モレーラ(ルドルフの馴染みの高級娼婦)
ベイミードルトン大佐:ギャリー・エイヴィス(エリザベートの愛人)
四人のハンガリー高官:ベネット・ガートサイド、ヴァレリー・ヒリストフ、蔵健太、トーマス・ホワイトヘッド(ルドルフの友人)
カタリーナ・シュラット:エリザベス・シコラ(独唱)
アルフレート・グリュンフェルト:ポール・ストバート(ピアノ独奏)
エドゥアルド・ターフェ伯爵:アラステア・マリオット(オーストリア=ハンガリー帝国の首相)
ホイオス伯爵:エリック・アンダーウッド(ルドルフの友人)
ルイーズ公女:エマ=ジェーン・マグワイア(ステファニーの妹)
コーブルグ公フィリップ:デヴィッド・ピカリング(ルイーズの夫、ルドルフの友人)
ギーゼラ公女:サイアン・マーフィー(ルドルフの姉)
ヴァレリー公女:フランチェスカ・フィルピ(ルドルフの妹)
ヴァレリー公女の子供時代:リャーン・コープ
マリー・ヴェッツェラの子供時代:タマラ・ロホ
ロシュック:ミハイル・ストイコ(ルドルフの従者)
ラリッシュ伯爵:ヨハネス・ステパネク
その他、来客、メイド、娼婦、紳士、使用人、侍女など:英国ロイヤル・バレエ団
指揮:バリー・ワーズワース
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
◆上演時間◆
【第1幕】18:30-19:15
【第2幕】19:35-20:30
【第3幕】20:50-21:30




コメント (4)
うわっ!同じ日に鑑賞していたんですね。
それなのに私の理解力の低さときたら・・・*ため息*
四人のハンガリー高官の役割は全く理解できず、
ラリッシュ伯爵夫人に至っては途中で誰だか分からなくなる
というていたらく・・・。
投稿者: 菊花 | 2010年6月23日 22:50
日時: 2010年6月23日 22:50
見たかった...(涙)ロッホのマリー、素敵だったのですね。ビデオで見た限り、マクミラン作品の中でも暗さが目立つ作品という感じがしたのですが、ハプスブルグ家の悲劇を作品化するのだから暗い&重厚なのは当然ですよね。そうそう、ロッホのタチアナは私も見てみたい!
投稿者: noel | 2010年6月26日 15:02
日時: 2010年6月26日 15:02
>菊花さん
会場は盛況だったから、全然気づきませんでした。残念〜
BBS拝見して「あ」と思ったのですが...。
今回はこの公演のための代休を取ったので時間の余裕があって、プログラム等じっくり読みました。
振り返って一番興味深かったのは歴史的背景だったので、更に調べてこういうエントリになりましたの。
実は正直な感想と言うか評価は菊花さんと似てますw
投稿者: ogawama | 2010年6月27日 00:20
日時: 2010年6月27日 00:20
>noelさん
手術ご成功おめでとうございます。
速やかなご回復、お祈りしております〜。
ロホには「バカテク」「気の強そうな...」というイメージを持っていたのですが、妖精のような彼女を見てすっかり参ってしまいました。
強靭でしなやか、好みです。
もっと早く知っていれば...。
この重厚さがロイヤルらしいです。
投稿者: ogawama | 2010年6月27日 00:27
日時: 2010年6月27日 00:27