東京文化会館で英国ロイヤル・バレエ団の公演「リーズの結婚」を観た。初日のマチネがロベルタ・マルケスとスティーヴン・マックレー、ソワレがマリアネラ・ヌニェスとティアゴ・ソアレス、そして最後がサラ・ラムとイヴァン・プトロフが主演というバランスのよい配役のはずだったのだけど、18日にサラ・ラム→ラウラ・モレーラ、イヴァン・プトロフ→リカルド・セルヴェラという発表があって...。私はラムの容貌や雰囲気が好きで、確信を持って彼女の日のチケットを取っていたので、かなりショック(初日は仕事で行けなかったんだけど)。プログラムの配役表はちゃんと変更してプリントされていて、退団したというプトロフの写真はどこにもなかった。足を怪我したラムは「うたかたの恋」のラリッシュ伯爵夫人は予定通り演じるそうだけど、私が行くのはガレアッツィの日なのよね〜。妖精のように儚げな彼女と、ご縁がないのは寂しい・・・。そう言えばNBAバレエ団の「ジゼル」に出演予定だったパリ・オペラ座のデルフィーヌ・ムッサンも怪我で降板したそうで。代役はミュリエル・ズスペルギーと聞いたけど、カンパニーのサイトに記載がないので不確か。そっちに行こうか一時迷ったので、不思議なシンクロです。と、とにかくダンサーに怪我はつきもので、こればっかりは仕方がない。
前置きが長くなったけど、5月の「マラーホフの贈り物」以来の生バレエ鑑賞は楽しかった。ポイントはファースト・ソリストのリカルド・セルヴェラがマリインスキーのサラファーノフ似のさわやかな好青年だったこと。ルックスはともかくラウラ・モレーラとシモーヌ役のアラステア・マリオットの演技が巧くて、後半かなり感情移入できたこと。
「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」として知られているこの作品、「ジゼル」と並ぶ最古の古典をフレデリック・アシュトンが改訂振付したのだという。友人から「地味」な作品と聞いていたので、お勉強するつもりでチケットを取った。尊敬するバレエ評論家長野由紀さんの著作「バレエの見方」において、リボンが大きな役割を果たすとされていたので、特に注目。なるほど恋人同士のサインに使ったり互いにからめていちゃいちゃしたり。新体操みたいにダイナミックに泳がせて愛の隠喩とするなど、大活躍。アシュトンは豊かな発想とユーモアのセンスを持った人だったんだなあと思った。そして親子や恋人同士に機微にも聡い。奇抜な雄鶏と雌鳥のダンスや、本物のポニーや、「ドン・キホーテ」のガマーシュのようなアランの道化っぷりにシモーヌの木靴のタップなど振付けにおける見所は多いのだが、純粋に感動させられたのは「愛情」だ。1幕は割と醒めた目で鑑賞していた私をひきこんで行ったのは、2幕でひとり留守番するリーズがあれこれ妄想して百面相するところ、そしてそんな彼女に熱烈な愛を捧げるコーラスの一途さ。きびしいようで実はリーズに甘いシモーヌの、滲み出る優しさ。ハッピーエンドのエンディングに向かってハラハラしながら、いつの間にか舞台に夢中になっていた。やはりロイヤルのダンサーは演技力があるなあと感心。
ダンサーのテクニック的にはふつう。ひとつ非常に美しくないリフトがあったのだが、あれはミスだったのだろうか。リカルド・セルヴェラが好印象だったので、とりあえず彼のバジルを見てみたい。まだ主役はレパートリーにないようだけど。リーズとアランのダンスにコーラスが割り込むところ、ドアの窓ごしにコーラスがリーズを持ち上げるなど、ひと手間かけた独創的な振付けも心に残った。
◆キャスト◆
シモーヌ(裕福な農家の未亡人):アラステア・マリオット
リーズ(その娘):ラウラ・モレーラ
コーラス(若い農夫、リーズの恋人):リカルド・セルヴェラ
トーマス(金持ちのぶどう園主):クリストファー・サウンダース
アラン(その息子):ポール・ケイ
おんどり:ジェームズ・ウィルキー
めんどり:エリザベス・ハロッド、べサニー・キーティング、エマ=ジェーン・マグワイア、ロマニー・パジャク
リーズの友人:タラ=ブリギット・バフナニ、セリサ・デュアナ、フランチェスカ・フィルピ、 メリッサ・ハミルトン、クリステン・マクナリー、ピエトラ・メロ=ピットマン、 サマンサ・レイン、ララ・ターク
村の公証人:トーマス・ホワイトヘッド
公証人の書記:ジェームズ・ウィルキー
その他、村人達、穫り入れをする人たち、馬丁たち:英国ロイヤル・バレエ団
指揮:ダニエル・キャップス
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
◆上演時間◆
【第1幕】15:00-16:10
【第2幕】16:35-17:20


