新国立劇場で「カルミナ・ブラーナ」の公演を観てきた。同じくデヴィッド・ビントレー氏振付の「ガラントゥリーズ」が同時上演。私はオペラはほとんど見たことがなくて、新国立劇場で上演されたものは映像ですら見てない。なのでかえって合唱団とソリスト歌手が登場する「カルミナ・ブラーナ」は新国立オペラのプレビューになるかな〜なんて考えて(ならないか・・・)、そういう意味でも楽しみにしていた。もちろん次期芸監のビントレーがはじめてこのカンパニーに振付けた演目の再演であるし、一度は見ておくべき舞台という認識でチケットを取った。
<ガラントゥリーズ>
【振 付】デヴィッド・ビントレー
【音 楽】W.A.モーツァルト
川村真樹/湯川麻美子/小野絢子/長田佳世/山本隆之/芳賀望/八幡顕光/福岡雄大/大和雅美/寺田亜沙子/伊東真央/井倉真未
アブストラクト・バレエだけど衣装も振付も正統派でクラシカル。バランシンを思い出させるので好きなタイプだ。新国の女性ダンサーはなんて言うかひとりひとりに芯が通っていて、自立している感じ。国内の他のカンパニーだと端役クラスの動きが発表会的で白けてしまうことがあるのだが、ここは平均レベルが高い。安心して見ていられる。男性ダンサーも良い。女子では以前から小野さんには注目していたが、湯川さんの動きはシャープだし川村さんのラインには品があって、むしろ目を惹かれた。音楽のせいか後半飽きる。
<カルミナ・ブラーナ>
【振 付】デヴィッド・ビントレー
【作 曲】カール・オルフ
【指 揮】ポール・マーフィー
【舞台美術・衣裳】フィリップ・プロウズ
【照 明】ピーター・マンフォード
【合 唱】新国立劇場合唱団
【歌手】臼木あい、五郎部俊朗、牧野正人
【運命の女神フォルトゥナ】ヴィクトリア・マール
【神学生1】グリゴリー・バリノフ
【神学生2】八幡顕光
【神学生3】ロバート・パーカー
【恋する女】さいとう美帆
【ローストスワン】本島美和
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
開演前、オーケストラピットの後方に続々と合唱団が入場してきて、それを見ているだけでわくわくした。人間の歌声はいいわ〜。やっぱり大合唱の部分やソリストが歌うところは舞台が盛り上がる。逆に言うと演奏だけのシーンでは踊りが単調に感じられて、ダンサー的にはやりにくいかもと思った。振付的に印象が強いのは序奏部と最後の「O Fortuna」。フォルトゥナはボディコンのドレスを着て観客に食いつかんばかりの迫力でダンスする。バレエというよりショーという感じ。バーミンガム・ロイヤルバレエのヴィクトリア・マールは筋肉質の現代的なダンサーで、美人だけど戦士っぽい。神学生1が出てくるのが「春に」、これは若者が初恋に破れる物語かな。グリゴリー・バリノフはディカプリオみたいにやや童顔でしっかり体型のダンサーで、自分のペースをしっかり保って溌剌と演技していた。契約ソリストらしい。「居酒屋にて」の神学生2は食欲や酒に溺れる体育会系。八幡顕光さんは後半スタミナ切れかなーと思った。3部「求愛」ではイケメンのロバート・パーカー(バーミンガム・ロイヤルバレエ)が神学生3で惜し気もなくパンツ1枚になって、ヴィクトリア・マールと恋の駆け引きをするんだけど結局負けちゃう。まあ相手は女神だし。基本的にビントレーの「イメージ」の世界が展開される中、随所の合唱+男性群舞のシーンが私のツボかな。終章の盛り上がりが素晴らしいと聞いていたのだが、それって「Blanziflor et Helena Ave Formosissima」のところだったか。巨大な白い布で一瞬舞台を覆ってしまって、たしかマールが娼婦から運命の女神へと再変身するのだが、ここは非常に胸が高鳴った。全体を通して見るとアダム・クーパーの「兵士の物語」のように猥雑な芝居仕立てのダンス、という感じの演目だった。イギリスっぽい。衣装が悪趣味なのも混沌を表現するためと思うと納得できる。最後に得られるカタルシスへの貢献。