大森の龍子記念館で「川端龍子名作展 龍子と建築~描いたものと建てたもの」を観てきた(1/31デ終了)。この記念館は建築好きの龍子自ら設計した私設美術館だったが、平成3年より大田区の施設に。隣接する龍子の居宅跡地も公園として保存され、日に3回見学ツアーを行っている。龍子の作品をまとめて見るのははじめて、もちろん龍子記念館も初訪だったが、今まで遠い存在だったこの日本画の巨匠を身近に感じることができて、とてもいい時間を過ごすことができた。
龍子と言えば大作主義の作家だが、本展では《龍子垣》《海洋を制するもの》のような巨大な作品だけでなく、建築スケッチ風の小品も多く出展されていた。これが巧い。走り書きしているようで、自分の捉えた印象をしっかり形にしているのが一目でわかる。《水車》など、地味なのになぜかはっとする造型。大変記憶力に優れたひとだったらしいのでこれは単なる写実ではなく、龍子の眼というフィルターが作品に力を与えているのだろう。例えばこの《稲妻》、三重塔が非常に精密に描かれているが、カクカクっとした稲妻と鋭い雨の線が画に緊迫感を与えていて、背筋がのびる。
《日々日蝕》という作品は古びた家とビルが描かれた作品。地味〜な色合いながら押し出しの強さが感じられるのが不思議。ふと現代作家の大岩オスカールさんの初期の作品(北千住のアトリエで描かれていた頃)を思い出した。大岩氏も大作主義であり、下町の暗い色彩を通して揺るぎない生命力のようなものを感じさせた、ポジティブなアーティストだ。
こんな鮮やかな作品もある。この構図、前景にでーんと一番目立つ籐椅子が置かれて言葉は悪いが傍若無人な感じもするのだが、画家のプライベートな視線を共有しているような楽しさもあり。
旧居、画室、立派な庭園のある龍子公園にもお邪魔した。龍子自ら設計し、増改築を重ねた晩年のアトリエ兼住まい。館員の女性が「龍子せんせいは、」と親しみをこめて巨匠の建築お宅ぶりを紹介してくださるので、楽しい。この界隈は馬込文士村と呼ばれた地帯だが、龍子が居を構えた頃はまだ開かれていない湿地帯で、設計も湿気対策に重きが置かれたとか。床下の通気口など、よく見れば確かにユニークな造り。竹を多用した垣根や軒下や天井、一枚板の縁側など、建築材にも龍子のこだわり。あちこちに隠された龍のモチーフ。独特の採光、大きなガラス戸、明かり取りの窓の凝った模様など、洒落ている。古仏(なんと重文指定)を所有し持仏堂まで作っていたとは。
洋画から日本画に転向し、これを独学で習得。写実を重んじた日本画壇においては異端扱いされたが、「会場芸術」を主張して大作を産み出し続ける。「青龍社」を旗揚げして若手の育成にも尽力。梅のほころぶ晴れた冬の日に、龍子の熱く豊かな人生に触れてきた。



コメント (3)
この記念館も龍子の作品も、自邸も好きです。
最近ちょっとご無沙汰していますが、
お家と作品画像を見ることができて嬉しくなりました。
「稲妻」は本当に素晴らしい!
新しいカメラ好調ですか。とてもきれいに撮れてますね。
投稿者: meme | 2010年2月 4日 19:02
日時: 2010年2月 4日 19:02
>memeさん
画像は古本屋で入手した江戸博での回顧展の図録を使いました。
これまではなぜか《一天護持》が龍子のイメージだったので、やっと開眼。
ただし本展は大作は少なかったです。
自邸は最近だいぶ庭木を刈り込んで、周囲から中がよく見えるようになったそうです。
memeさんがいらした時と、感じが変わっているかも。
カメラは良いのですが、撮るのが下手でupできるのはこれしかありませんでした〜。
しかし土牛が遺作の龍の眼を入れたとかいい話をたくさん伺って、龍子は私の中で確固たる存在になりました。
投稿者: ogawama | 2010年2月 4日 21:00
日時: 2010年2月 4日 21:00
こんばんは
龍子記念館は桜の時期によく出かけます。
あの界隈はご近所さんのお花見の舞台なんで、素知らぬ顔でベンチに座り、スーパーで買ったもの食べたりしながら、知らない人々と和気藹々と・・・
えーと、肝心の龍子が飛んでました。
龍子のおうちの庭の爆弾で出来た池とか好きです。
そういう負の遺産までも自邸の眺めの一つにするところが凄いです。
あのシェパードのわんこ、コワカワでいいですね。
わたし、実は龍子の絵では「夢」が一番すきなのです。
投稿者: 遊行七恵 | 2010年2月 6日 00:04
日時: 2010年2月 6日 00:04