東京文化会館でマリインスキー・バレエの公演「眠れる森の美女」を観てきた。上演時間が3時間40分と長いので、開演は18:30。無理。。と思ったけど、まだ納得できるオーロラ姫を見たことないので、ガラでしか知らないヴィシニョーワだけどあの強靭な肉体なら完璧なローズ・アダージオを踊ってくれるだろうと、無理を承知でチケットを取った。仕事を終えて1時間遅刻。でも親切な東京文化会館のお姉さまが1幕途中で予備席に案内してくださったので、オーロラ登場には間に合った。ほっ。
私はそもそも「眠り」は好きではない。プロローグなんて飛ばしちゃっても全然気にならない。なので一番いいタイミングで入場したとも言える。しかしヴィシニョーワが出てきた時はぎょっとした。メイクが派手。美人だから映えてはいるんだけど、こんなマダム顔のオーロラって許されるのだろうか。あわてて女王の顔を見ると彼女も派手顔なので、ああマリインスキー王家はこれでいいんだと自分を納得させる。紅い唇、6番くらいまでがばっと見せる笑顔、婉然として自信たっぷり。実際踊りは見事で、バランスは揺るぎなく作り出すシルエットは文句なし、テクニック的にこれ以上のオーロラはないだろうと思わせる。しかも音のひとつひとつをきっちりつかまえていて、芸術性もアピールしてる。衣装で腹筋が隠れているので、さほど筋肉ムキムキに見えず可憐だった。
過去に見た「眠り」で憶えているのは、去年のロイヤルのヌニェス・ラム・マルケス(マチネ・ソワレ・マチネで続けて見た)、シュツットガルトのアマトリアン。好きなタイプではないけれどヌニェスのキラキラオーラと強靭な肢体が一番印象に残っている。アマトリアンは不調だったみたいで1幕が不安定だったけど、ヌニェスよりオーロラのイメージに合った演技だった。今回のヴィシニョーワは私の過去のオーロラ達よりハイレベルだった。美人で可愛いくてスタイルが良くてハイテク、音楽性が高くて「見せる」ことを心得ていて。でもねえ。思わぬ伏兵が現れて、私の感動をさらって行っちゃったのでした・・・
それはフロリナ王女のエフゲーニヤ・オブラスツォーワ!今年のNBAガラで見て可愛いなあとは思っていたのだけど、彼女は巧者の多いマリインスキーのダンサーの中で際立って素晴らしかった。青い鳥よりフロリナに目が釘付けになったのって、はじめて。青い鳥の声に耳を澄ますポーズ。片手を片耳にあてて。憧れと希望に溢れる、無垢な笑顔。小柄でキュートな顔立ちだけど下半身はまったく揺るがず、優美なラインを描く上半身をしっかり支えている。バレエのポーズって理想型を目指して形作られているのだと思うけど、誰もがザハロワ様のような完璧なラインを描けるものではない。ひとりひとり体型が違うから、自分なりの完成形を模索するのだろう。ヴィシニョーワはかなり美しい。でもオブラスツォーワには天性の優美な「型」が備わっている。これぞクラシック・バレエという。単なるディベルティスマンなのに、彼女のフロリナに感動してしまった私。フィナーレでヴィシと並んで踊っている彼女を見比べて、芸術性が高いのはこっちと勝手に判定してしまった。まだファーストソリストですよね。近い将来彼女の全幕を見られるだろうか。ゾクゾクする。
さて総評(途中から見たクセに生意気に)。まずカンパニーのレベルの高さには、「白鳥」に続いて驚嘆した。美術も素晴らしいしね。特に女性、ダンサーの質が高くてコール・ドに至るまで美女揃いで、舞台上で目移りする。しかも揃ってるし。リラの精のコンダウーロワが予想以上の美形でびっくりした。背が高くてスタイル抜群、気品も艶やかさもあって上半身の美しさは絶品。マリインスキーのすごくセンスのよい衣装を見事に着こなして。あれだけ恵まれた容姿なのに6年もコール・ドだったなんて、逆によほど弱い部分のあるダンサーだったのかと邪推してしまうくらい。ヴィシニョーワも大変だなあと思った、いくら人気があって頑張っていても尋常ならざる逸材たちがひたひたと追ってくるんだもの。腹筋割れるまで筋トレするよねーと同調。コンダウーロワの旦那さまのバイムラードフは、遅刻したせいでほとんど活躍を見れず残念。忘れちゃならないコルプ王子は相変わらず柔軟で力強いノーブルな踊りを見せてくれて、ヴィシの濃さをしっかり受け止めてあげていて良かった。ふたりの間に化学反応みたいのは感じなかったけど。うん、ヴィシニョーワは自己完結してるダンサーで、舞台に感情移入させるタイプではなかった。演目をよく選びたいダンサーかな。でもマリインスキーの舞台だったら、私は何でも喜んで見ると思う。去年見たボリショイも世界最高と思ったけど、こちらもひと味違って超一流。残る「イワンと仔馬」とガラも、すごく楽しみ。
≪出演≫
オーロラ姫 : ディアナ・ヴィシニョーワ
国王 : ウラジーミル・ポノマリョーフ
王妃 : エレーナ・バジェーノワ
デジレ王子 : イーゴリ・コールプ
求婚者たち : コンスタンチン・ズヴェレフ : マクシム・ジュージン : アレクセイ・チモフェーエフ : デニス・フィルソーフ
リラの精 : エカテリーナ・コンダウーロワ
優しさの精 : マリーヤ・シリンキナ
元気の精 : アンナ・ラヴリネンコ
鷹揚さの精 : エレーナ・ユシコーフスカヤ
勇気の精 : ヤナ・セーリナ
のんきの精 : ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク
ダイヤモンドの精 : ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク
サファイアの精 : マリーヤ・シリンキナ
金の精 : アンナ・ラヴリネンコ
銀の精 : エリザヴェータ・チェプラソワ
悪の精カラボス : イスロム・バイムラードフ
カタラビュット / ガリフロン : ソスラン・クラーエフ
家来 : アナトーリー・マルチェンコ
フロリナ王女 : エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
青い鳥 : アレクセイ・チモフェーエフ
白い猫 : ヤナ・セーリナ
長靴をはいた猫 : フョードル・ムラショーフ
赤ずきん : エレーナ・ユシコーフスカヤ
狼 : アナトーリー・マルチェンコ
子供たち : バレエ シャンブルウエスト
コメント (2)
マリインスキーウィーク、楽しんでらっしゃいますね。
ヴィシのオーロラはガラ等で観たことはありますが、一瞬違和感があるものの
その後は力技でヴィシ=オーロラを納得されられるというか…
それにしてもやはりフェスの眠りはogawamaさんに観ていただきたかったです。
いつかその機会が訪れますように。
オブラスツォーワいいですよね。マリインスキーで好きなダンサーです。
しかしフロリナが彼女で、リラがコンダウーロワとはなんと贅沢な布陣でしょう。
>6番くらいまでがばっと見せる笑顔
一瞬、脚元を見たりしましたが、分かったらなるほど納得の表現です!!
投稿者: F | 2009年12月 5日 20:10
日時: 2009年12月 5日 20:10
>Fさん
すみません、歯医者的には6番=第一大臼歯なんですけど、バレエには6番ポジションというのがあったんですね。
5番までかと思ってました。フォローありがとうございます〜。
ヴィシのオーロラが力技って、まさにおっしゃる通り。
納得させる実力はさすがだと思います。
彼女とオブラスツォーワが並んだ時はじめて、ヴィシはコンテンポラリー系のダンサーだなと思いました。
積極的に現代系のレパートリーを増やすうちに、古典のノーブルさから逸脱してきたような気がします。
違うかな。
投稿者: ogawama | 2009年12月 6日 00:37
日時: 2009年12月 6日 00:37