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H3/グルーポ・ヂ・フーア Grupo de Rua 11/11

にしすがも創造舎でフェスティバル・トーキョー09秋の公演のひとつである「H3/ブルーノ・ベルトラオ(グルーポ・ヂ・フーア)」を観てきた。F/Tのプログラムを見た時点ではあまり興味がなかったのだが、購読ブログやTwitterでの評判が良ので、当日券で駆け込み。いや〜口コミってありがたい。今年見た(あんまり見てないが)コンテンポラリー・ダンスの中で、ずば抜けて良かった。実は去年のコンテ・ベスト1も同じくブラジルのデボラ・コルカー・カンパニー「ルート ROTA」(感想)だったことを考え合わせると、ブラジルダンス界に何が起こっているんだ!と気になってしまう。オリンピックは関係ないと思いますが。

シンプルで静かな空間に躍動するダイナミックでエネルギッシュな身体。 触れそうで触れない、ギリギリの距離を保ったムーヴメントの連続は「知覚」や「空間」への思索を感じさせる。 ブラジルのストリートから登場した、哲学するヒップホップダンサー、ブルーノ・ベルトラオの最新作が東京に初登場。 世界が注目するダンスの新機軸を目撃せよ。

演出・振付のBruno Beltrão(wiki)は1979年生まれのブラジル出身ダンサー。クラブでダンスにのめり込み、ヒップホップのクラスを受けるようになったとか。彼のスタイルは「哲学するヒップホップ」と呼ばれているそうで、公演前にプログラムでその旨読んで「は?」と思ったが、ダンスを見たら何となく納得した。掲載されたインタビューに「分析・観察することは動くことよりもずっと強く、しばしば、何より大好きなヒップホップに対する賞賛より、そこに足りていない何かに気付かされます」というくだりがあって、理知的な人なんだなあと感心。

ダンサーは10名弱、まんまストリートから紛れ込んできたようなお兄さん達。イメージはチープでマッチョ(YOCA!のサイトに写真アリ)(私のお気に入りは中段右端の彼)。開演直後はストリートのかすかなざわめきの中で舞台前方の明るい部分に2・3名のダンサーが出てきて、ペアで絡み合うような動きをするだけで、前の席の観客たちの頭でよく見えなくて物足りなかった。でも、体の一部に萎縮した部分があるような、かなり独特な振り。私は「レインマン」のダスティ・ホフマンを連想した。ダンサー同士の関係性は一触即発というややスリリングな感じだった。雰囲気が一転するのは舞台全体に照明が入ってから。いきなりダンサー達が円を描いて後ろ向きに全力疾走する。眩しさ、スピード、板張りの床に敷かれたシートの数限りない傷(スケートリンクのよう)。そう、ライティングによってこの体育館を使った会場の表情が様々に変わり、今まで見てきたにしすがも創造舎とは思えない、洗練された異世界が出現したのだった。照明が落ちると床の傷が見えなくなって、一転ナイトクラブみたいなツルツルしたフロアに変化したりして。セットなんて皆無に等しいのに、かなりの演出力。ダンサーの衣装も普段着で出てきてるように見えて結構調和が取れているし、ヨーロッパで人気のカンパニー、というのが事実なんだなあと頷く。


ダンサーの動きはたしかにヒップホップなんだけど、まさに動きを切り取ってモチーフ化したような、独創性がある。それに彼ら、すごいバネを持っていて、重量感と俊敏さがダンスに厚みをつける。走ると速くてすごいんだよね〜、途中でダッとジャンプしたりして。踊りっぱなしというわけではなく、バスケの試合のように場外に出たダンサーは座り込んだり水を補給したり静的な存在になり、出番が来るとパワーを爆発させるから、とにかく迫力があって。あと、分子の動きのようにダンサーとダンサーが衝突することもままあるんだけど、ここで生じるバトルがまたカッコいい。吾妻橋ダンスクロッシングで見たcontact Gonzo(jp)も疑似喧嘩ダンスだったけど、ソレに終始していたのが私的に残念な面だった。ベルトラオの振付けではバトルは抽象化していて、ダンスとしての流れを損なわないのだ。音楽のないシーンが多いのにリズム感が失われないのは、彼らの鼓動や息遣いがBGMになっているからだろうか、と考えさせられた。

ダンサー全員がイケメンとは言わないけど、彼ら実力的にはほとんど互角に見えた。ひとりひとりの動きには微妙なクセのようなのがあって、最初は「チック」「クネクネ」「マッチョ」とややネガティブなあだ名を付けていたんだけど、みんな踊れるので、群舞になると個性がプラスに働く。同じ動作を繰り返していくシーンで、走る軌跡やジャンプのキレや高さが皆少しずつ違うのが、面白い。飛んだり跳ねたりだけじゃなくて関節を利かせた複雑な動きも細かく取り込むベルトラオの振付けは、意外性があってとても良かった。抽象が苦手な私はストーリー性の薄いコンテンポラリー・ダンスを見ているとすぐにうとうとしちゃうんだけど、今回は逆に目が冴えてしまって、固唾を飲んでダンスに見入った。このカンパニー、次に会えるのがいつか、さっぱりわからないし。ヒップホップって雰囲気で見ちゃうけど、実は人間の身体機能を最大限に活かしていて面白い。クラシックバレエとは違った意味で。背中を支点にした動きに特徴があるかな。

コメント (2)

菊花:

おや。11日、私も見てました。
心の中で「すげー!スゲー!」の連発。
あの全力後方疾走はアスリートだし。
ちなみに私のお気に入りは
黒Tシャツのアフリカ系?のお兄さんと、
黄色Tシャツのタトゥーのお兄さんです。
ストリートファイト?にノックアウトだわ。

ogawama:

>菊花さん
あらっ気付かなかった。
F/Tはあとペニノしか取っていないけど、こんな素晴らしいカンパニーがいるのかと思ったら俄に全公演行きたくなりました。
タイ演劇のやつはバレエ公演と重なってしまったので、あきらめているのですが。
ブラジルの振付家、デボラ・コルカーもベルトラオも、ダンサーをコマのひとつのように使ってダイナミックな演出をしますが、個々のダンサーの発する生命力みたいのをまったく殺ぐことなく、のびのびと踊らせるので見てて気持ちいいです。
器が大きいのかなー。

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