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「ピロスマニ」下高井戸シネマ 白夜映画祭III

下高井戸シネマで「ピロスマニ」を見てきた。白夜映画祭III2回目参加。本当は全作見たいところだけど、レイトショーなので帰宅が0時になってしまうから厳選。いや〜、ロシア映画って素晴らしい。特にこの「ピロスマニ」はまごうかたなき名作だし、ロシア絵画の好きなアートファンは必見。7/31(金)~8/2(日) はアフタヌーンショーやってます。

画家ピロスマニと言えば去年Bunkamuraザ・ミュージアムで開催された「青春のロシア・アヴァンギャルド」展が思い出される。結構な数の作品が展示されましたよね。ロシア・アヴァンギャルド自体は好みではなかったけど(抽象系苦手)、ピロスマニの素朴で幻想的な作品、特に動物画には強く惹かれた。この人はグルジアの国民的画家と呼ばれているけど生前は不遇で、酒に溺れて孤独の内に亡くなったらしい。典型的な「破滅型天才」と言っていいのか。

20090715_01ニコ・ピロスマニ ≪小熊を連れた母白熊≫

でもこの映画には湿っぽい暗さはなかった。タッチはドキュメンタリー風なんだけど、グルジアの風景自体が詩的で美しく、全編夢を見ているよう。元々豊かな土地で、人々は独自の言語と信仰を大切にし、仲間意識が強いようだ。ロシア映画って呑みながら軽食摂ったりお茶したりするシーンが実に多くて、食いしん坊の国って感じがする。ピロスマニは生まれながらにして孤高の芸術家。みんなに「ニコ」「ニコ」と呼ばれ結構人気者なんだけど、頑に定職に付かず家庭を持たず(試みたがうまくいかない)、放浪しながら衣食と引き換えに画を描いて暮らす。ピーク時は街中の居酒屋がピロスマニの絵でいっぱいという状況で、どのシーンにもバックに彼の作品があるのでアートブックのような映画だなあと思った。長身で飄々とした風貌のピロスマニ役の俳優は、実物の写真と似てた。いやアフタンジル・ワラジは俳優ではなくて、グルジアの画家なのだそうだ。

この映画の魅力は、モノローグの少なさかな。ピロスマニの眼に映る風景がすべてを物語ってしまう。彼が馬車に乗って通り過ぎる女性の顔をはっとした表情で見つめる時、その胸に去来する初恋の女性の面影を、私たちは確信を持って思い浮かべる。モスクワの中央画壇に紹介されてもて囃されて、あっと言う間に「稚拙」と突き落とされた時、彼は「僕は何も悪いことはしていない」と呟くのみだが、馴染みの店々から彼の画が容赦なく取り払われたのを、一緒に眺めなくてはならない。女優マルガリータの舞台を、無言のままむさぼるように見つめるピロスマニ。「百万本のバラ」のモデルが彼らなのだが、映画にはそんな派手なエピソードは出て来ない。彼は彼女を見て、彼女の絵を描くだけ。

バックの音楽が少ない分、グルジアの人々の唄声が艶やかに響く。婚礼の日のダンス。放牧されるウシや山羊。タマラ女王の伝説。復活祭のキス。こんなに無垢で美しい映画は、なかなかない。ねー、marcoさん

コメント (2)

marco:

は、はい(呼ばれてビックリしてて……)

もう全くその通りで、ロシアアバンギャルドでピロスマニに関心を持った人には是非とも見てほしいですね。
マルガリータなんて、あの絵のままの衣裳で踊ってて、それだけで何の説明もいらないし、祝宴を見守る犬の表情だけですべてが満たされるし、あげたらきりがないほど全てが素晴らしい映画ですよね。
ここまで素直にオススメできる映画に久々に出会いました。

ogawama:

>marcoさん
TB送りつけた上でお呼び立てしてしまって、スミマセン。
でもこの素晴らしい映画の感想をupされたのって、私のまわりではmarcoさんくらいで。
オススメですよねえ。
俳優も良かったですよね。
あれ、実在の人たちも多いのですよね?
マルガリータは女優さんかバレリーナが演じたのだと思いますが、あのダンス、痺れましたよね〜。

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