横浜美術館で開催中の金氏徹平さんの個展「溶け出す都市、空白の森」を見てきた(5/27マデ)。若干30歳の新進美術家の金氏さん、作品を見る機会は今まで結構あったが(児玉画廊の個展とか森美術館「笑い展」とかMOTアニュアル2008)、あまりぴんと来るものがなくて流してきた方。今回美術館で個展をされると言うのは驚きで、実はスルーしようかと思っていたのだが。いつも参考にさせて頂いている'A'holic daysさんが高評価されたので一転、行くことにした。いや〜、行って良かった。やっぱりプロじゃないから、個展でも見ないとなかなかその作家さんのコンセプトが理解できない。様々なシリーズの作品を俯瞰することで、金氏さんの世界をいい位置から見ることができて、とても面白かった。たとえ好きになれなくても、この年代の作家がどうやって美術館というハコに挑んだか、見届けるのは現代アートファンにとって楽しい経験になると思う。
訪れたことのある方はご存じだと思うけど、横浜美術館の企画展示室は3つの区画に分かれていて、そこを更に2つくらいに区切って展示を行なうことが多い。今回金氏さんはその区切りは取っ払って、3つの大きなギャラリーを作った。で、大きなハコに気圧されて常にない巨大作品をこしらえたのかと言うと、そうではない。各部屋を異なったテイストでプロデュースして、その中で今までバラバラに公開されてきた様々なシリーズを連鎖的に並べた、そんな感じ。なのでとてもわかりやすかったし、各作品をじっくり味わうとができた。
正直に言ってしまうと、金氏さんの作品はチープで意味不明に思えて、私はずっと好きでなかった。いきなりガラクタを積み上げて中身がわからないように白い樹脂でコーティングしたもの(《White Discharge》のこと)を見せられて、何を感じればいいのか(すみません...)。ゴミだって、サラ・ジーのようにカラフルに繊細に配列してくれれば美しさを感じるケド。と思っていたのに。第1室の真っ白な空間は、偏狭な視線を矯正してくれた。白い紙に描かれた白い油彩(《White Oil Paintings》)。実に彫刻家らしいペインティングで、トイレットペーパーのやつなんて本気で欲しいと思った。《White Discharge》も色々なバージョンを見ると隠された物体をシルエットで推測するのが楽しくなって、「覆う」「隠す」「白く染める」という行為に共感を感じる。極めつけは《Splash&Flake》。よくもまあ、細かいモノをたくさんたくさん集めてきたこと。髑髏のキライな子供って実はいないと思う。だから大人になっても、骨や骸骨(みたいに見えるもの)には、反応してしまうのだ。
こうして目が開かれてみると、見るもの見るものが驚きと喜びに満ちてきた。コーヒーのシミも(ハンバーガーが美味しそう)、液体の写真のコラージュも(ムーミンほしい)、色とりどりのグルーでプラスティックフィギュアを覆ってしまうのも(背中は見える。黄色はバナナみたい)、滲んだドローイングも、シールの枠だけペタペタ貼ってあるのも、みんな「何これ?」と思いつつ愛おしく感じる。Ghost Shipも巨大作品ながら、しっくり空間に馴染んでいた。金氏さんというとてもユニークなフィルターを通して、世界が不思議で輝かしいものに見えてくる。
特に素敵だったのが、《Tower》のmovie。30分ループの、床から天井まで届くような大きなアニメで、これは八木良太さんも製作に参加されている。動きだけでなく効果音がいい。MOTでTowerのペン画を見た時は巧いけど物足りないなあと思っていたのだが、こんなふうに成長していたとは!
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| Tower 20090430 |

コメント (4)
地元民なのに、今頃ようやく行ってきました。
お詫びに協力会員になってきました。
シリーズごとの展示が良かったですね。
「White Oil Paintings」、骨のもありましたね。
21_21の骨も楽しみですね!
投稿者: なでしこ | 2009年5月29日 00:59
日時: 2009年5月29日 00:59
>なでしこさん
別にお詫びしなくても〜
でも横美の情報が色々入ってきていいですね。
金氏さん展は会期末ぎりぎりで行かれた方が結構いらして、なんかほっとしました。
若手作家にああいう場を与える試み、よそもチャレンジして欲しいです。
投稿者: ogawama | 2009年5月29日 23:27
日時: 2009年5月29日 23:27
こんにちは。白いキャンバスに白の油彩は良い「掴み」でしたね。あのドローイングとオブジェの組み合わせで一気に惹かれたような気がします。
>MOTでTowerのペン画を見た時は巧いけど物足りないなあと思っていたのだが、こんなふうに成長していたとは!
同感です。絵のイメージからああいう世界が開けるのかと感心しました。
次はどんな素材、また色を使われるのでしょうね。若い方だけに楽しみです!
投稿者: はろるど | 2009年5月31日 10:30
日時: 2009年5月31日 10:30
>はろるどさん
掘り出し物な展覧会でした。
一度いいなあと思い出すと、前は意味がないと無視していた作品が急に愛おしくなったりして、自分の審美基準がすごくもろいことに気づいてしまいました。
現代アートは好き嫌いで判断しよーと思っていたのですが、これからは決めつけないで見ていきたいです。
投稿者: ogawama | 2009年5月31日 19:28
日時: 2009年5月31日 19:28