オーチャードホールでパリ国立オペラの初来日公演、の「アリアーヌと青ひげ」に行って来た。東京公演初日です。ひょっとして検索で来た方には申し訳ないが、私は音楽には疎い。楽器の聴き分けはできないし曲はあんまり知らないし、有名オケの特徴もわかっていない。好奇心でこの公演を観たようなもの・・・。最近パリ・オペラ座バレエのDVDにはまっていて、パリに対する憧れが高じているのも理由かしら。大好きなバレエ公演のオケの演奏はどうやら二流で、軽いフラストレーションがあった。
指揮:シルヴァン・カンブルラン
演出:アンナ・ヴィーブロック
アリアーヌ(ソプラノ):デボラ・ポラスキ
青ひげ(バス・バリトン):サー・ウィラード・ホワイト
まず総括。「ケチケチしないでS席もしくはA席を取れば良かった」。デュカスの曲はドラマチックかつ繊細で、どこで切っても美しい。歌手の動きに気を取られるのがもったいないほど。歌劇はヘヴィメタみたいにおなかに来るやつがいいなあなんて思っていた私に、もっと天国に近い世界があるんだよと教えてくれた。そしてパリ国立オペラ管の音色。ソフトで透明感があって、切れがある。楽器はよく鳴っていたと思うんだけど、雑味がないと言うか、荒々しさがなく、それがしっくり耳に馴染んだ。もっと近くで(3Fにいた)、音楽に包まれたかった。
歌手。デボラ・ポラスキはドラマティック・ソプラノとして定評のある人らしい。演技力はかなり。出ずっ張りのほとんと歌いっぱなしという難役を務めるだけのスタミナと声量はあったが、ここ一番の盛り上がりには欠けた。役柄自体がクールなせいか。だって青ひげの花嫁と言えば初々しくてびくびくした娘のはずなのに、このメーテルランク版では青ひげに堂々と反論し幽閉された妻たちを庇護し導く女丈夫って感じなのだ。あと、声質が前半活躍する乳母にちょっと似ていて、聴き分けにくかった。セリゼット役のアクセンティの方が声に艶があったように感じた。ウィラード・ホワイトは、存在感抜群だけど、ほとんど歌わないからもったいなかった。
演出。舞台装置に関しては事前にサイトの写真を見ていたので驚かなかったが、古い縫製工場をモデルにしたと言うセットが舞台を塞いでいて、右端にグレーの狭い壁があるせいで左右対称を崩していてなんともおさまりが悪い感じがした。展開により工場内に蛍光灯が灯ると劇的に奥行きが深くなることや、グレーの壁には各所の監視カメラ(?)の映像が映ることがわかって、だんだん納得したけど。右端は城の外との境界でもある。アリアーヌの衣装が妙に機能的で、ちょっと笑った。白いブラウスにベージュの色気のないスカート、首にはカメラみたいのがぶら下がっている。押し掛けて来た村人と対応する時は、ベージュのコートを裏返して白いコートに替えて羽織りダイヤの首飾りを付け、(+ポラスキの演技力で)城の女主人の貫禄を出すのだけど、彼らが帰るとさっさとダイヤを外してしまう執着のなさは、アリアーヌの個性をよく表していた。
結局解放された先妻達は元の服従生活を選び青ひげのもとに留まる。あれは「愛」だったのかなあ。そうすると愛を知らないアリアーヌが可哀想な気がする。男女の機微は当人にしかわからないよね・・。なんて考えていると音楽が耳に入らなくなってきて、このアバンギャルドと言われる演出に惑わされた自分がちょっと情けない。演劇として楽しむより演奏を堪能すべきだった気がする。
来週は懲りずに「青ひげ公の城/消えた男の日記」に行く。バルトーク版青ひげはちゃんと血みどろのシーンとかあるようなので、わくわく。しかし「トリスタンとイゾルデ」はビル・ヴィオラの映像が大活躍するみたいだし、青ひげ2作も映像を使っている。今時のオペラはそういうものなのかなあ。それともパリ(モルティエ)独特の手法なのだろうか。
オペラって説明が難しい!あとで加筆したりかなり修正したりするかもしれないけど、とりあえずupしておく。