新宿文化センター大ホールでピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団の「フルムーン」を観てきた。1週間前に見た「パレルモ、パレルモ」(感想)はいささか消化不良だったが、同じ舞台を観た方のブログを色々読んで記憶を蘇らせて、反芻した。テイストは好きなんだけど...。で、今はすでに私の中で伝説になりつつある(早い)。
さて「フルムーン」。上野で日光さんと月光さんと樋口五葉を見て、六本木でモデルをこなして(お金払った)から駆けつけたので空腹だったけど、テンションは高め。席を見ればセンターではないけど前から4番目、すごい。思い出したけど「パレルモ、パレルモ」は旧作なので、3F席にしたのだ。今回は水がたっぷり降ってくる舞台らしいが、しぶきが飛んでこないだろうか。・・・後でこれはまったくの杞憂だったとわかった。大変によく計算された演出だった。
「フルムーン」(2006) Vollmond
2部構成(60分+休憩+70分)
演出・振付 ピナ・バウシュ
美術 ペーター・パプスト
衣裳 マリオン・スィートー
e+の動画はここ→ http://mv-theatrix.eplus2.jp/article/84681352.html
冒頭、舞台前方に出てきたふたりの男性の動きを固唾を飲んで見守っていると...。やおら手に持った空のペットボトルを勢いよく振り下ろして、ヒュッという振動音を立てるという動作を何度も何度も繰り返す。ふたり息を合わせて。今回はうまく行ったな、今度はやや空振りかなーなんて見る方も真剣に見守る、そして耳を澄ます。ああすでに取り込まれているよ...と、思った。いい感じ。3人目の男性は長い木の棒を2本持って出て来た。今度は棒を振ってビュッと音を立てる。いつの間にか1本は他の男性に渡されていて、ふたりで。棒を持たない男性は退場。ダンサーも観客も体力・集中力は十二分にあるけどちょっと迷いも気負いもあるこの幕開けのタイミングに、こういう息を詰めさせるような演出っていいと思う。男性ダンサーに自然に気が行く。この後彼らは激しく巧みなダンスを繰り広げるのだけど、一体感を持って見つめることができた。
「パレルモ..」では踊りが少なくてダンサーの技倆がよくわからなかったけど、今回はすごい。男性はやわらかな素材のシャツとゆったりしたパンツをはいているので肉体美は全然強調されていないのだが(後でびしょ濡れになったり脱いだりするケド)、あの身体のうねり、反射神経、走るスピード、のたうつような荒々しい表現、苦渋、叫び、身悶え・・・。全然ノーブルじゃないけど、キレがあるから研ぎ澄まされた時間が続いていく。
絡んでくる女性ダンサーは、ぴったりしたロングドレスにハイヒールという衣装なので女らしさが前面に出て、激しさはない。でもそれぞれが女王様然として、表現力豊かだ。一番気になったのは、まるで少女のような小柄な女性ダンサー(本当に少女?)。あどけない顔をしてるけど、全身フルに使って感情を爆発させる。手指の動きが細かくて面白くて、新鮮だった。発作的な笑いが心底楽しそうな笑いに変わるシーンは圧巻だった。日本人ダンサーの瀬山亜津咲さんとの絡みはユーモラスだったなー。姐さんとチビちゃんという感じで、いいコンビだった。ピンクのドレスに濃茶の髪のややぽっちゃりしたダンサーは美形だしキュートな色気があって、表情は割と平坦なんだけど目が離せなかった。ちなみに瀬山亜津咲さんは八面六臂、何をやらせても堂々として巧くて、感心しきり。この方はチェ・ジウ似の美人だ。日本語の「語り」の多い年配のダンサー(ああまどろっこしい、時間があれば名前を調べるのに!)、彼女は場をつないだり盛り上げたり、年増のオカマさんみたいで存在感があった。後半でソロのダンスを踊ったけど、なかなか重厚だった。めちゃくちゃ細いのにゴージャスなブロンドのダンサーと、やっぱり細くて自虐的なダンサーも観客を惹き付ける力を十分持っていて、誰が出てきても見応えがあった。
と、今回はダンサーが少なかったので個々の区別がついたのだが、やっぱり一番素晴らしいのは振付けと演出なのだった。全2幕の内、水しぶきの大スペクタクルが展開する第2幕より、色とりどりのダンスやマイムの響宴である1幕の方が楽しく感じた。あと2幕の冒頭のモノクロっぽい世界(照明が暗く、ダンサーの衣装は黒)と。始めの方ほど細かいデティールが楽しめるし、2幕後半になると集中力が途切れてくる。今回の舞台の売りであろう天井から降り注ぐ雨、舞台後方のプールというか河のような水溜まり、バケツで勢い良く水をひっかけ合う、口に含んだ水を吹きかける、ペットボトルいっぱいの水を残らずワイングラスに注ぐ、等々、水・水・水の演出...は、麻痺しはじめた感覚を生き返らせる、サービスのような感じがした。しかしあれだけ派手にやっても客席が濡れないのは、すごい。
明日から年度始めと言うのに終わらない。困った。明日、続きを書くかも(書かないかも)。カーテンコールで黒いパンツスーツのピナが登場した。立ち上がって拍手する人多数。すごい盛り上がり。もうひとりダンサーじゃないボブの女性がいたけど、あれが衣裳のマリオン・スィートーだろうか。今回のコスチューム、あれだけダンサーが激しく動いてびしょ濡れになっても、動きを妨げず優美さを損なわずしかもふつうに着ててもシックで美しかった。
同じ舞台を観た方のブログを片っ端から読んだ。大好きなアルモドゥバル監督の映画「トーク・トゥ・ハー」の冒頭にピナの「カフェ・ミュラー」が出てくるという言及を見かけてえっと思った。映画館で見たんだけど覚えてない...。ああ、これか↓。アルモドゥバル氏と同じテイストなんだなー、道理でピナの舞台は好ましいのだと納得してしまった。
「café muller」の動画
YouTubeを小さく貼付けるやり方がわかった。これから多用しようかな♪
コメント (2)
フルムーン、泣く泣くチケットを譲った(売りつけた?)友人もかなり良かったと言ってました。これ新作なのですね。『パレルモ・パレルモ』は違う友人がやはり消化不良と言うか前の方が良かった様な事を言ってました。ちょっとトム・クルーズっぽい筋肉質の男性ダンサーが好きです♪
投稿者: kurohani | 2008年4月 4日 00:35
日時: 2008年4月 4日 00:35
>kurohaniさん
ご覧になれなくて残念でしたね〜。ピナ・バウシュは美的センスが大変よろしいし、変わったことをやっているように見せて実は観客受けをしっかり考えている感じが好印象でした。置いてけぼりはイヤですし。
ダンサーの名前が全然わからないので、ヒマな時に調べようと思ってます♪
投稿者: ogawama | 2008年4月 4日 23:24
日時: 2008年4月 4日 23:24