世田谷パブリックシアターに野村萬斎主演・演出の「国盗人」を観に行った。シェイクスピアの「リチャード三世」の翻案(アレンジ)劇だ。素晴らしかった。演劇は滅多に観ないけど、こんなに素直に没頭できたのははじめてだ。野村萬斎さんと白石加代子さんの演技は絶品で、声音・科白まわし・身のこなしなどすごく巧い。併せて脚本(と言うかシェイクスピアの訳し方)が実にナチュラルで、どこを取っても文句なし。作家の河合祥一郎さんは角川から「新訳 リチャード三世」を出されているそうで、今日は新潮文庫のを買っちゃったけど是非読んでみたい。
過去に「リチャード三世」を読もうとして挫折したのは登場人物の名前がややこしいせいだ。イギリスの王様はエドワードとかヘンリーとか、同じ名前で5世とか6世とかたくさんいるのでさっぱり憶えられない。その点「国盗人」は偉い。エドワード四世が一郎、クラレンス公ジョージが善二郎、グロスター公リチャードのちのリチャード三世が悪三郎となっていて、ひとめで彼らが長男次男三男だとわかってとってもシンプル。おかげでようやく原作戯曲を読む気になって、帰りに新潮文庫版を買った次第。ふつうは観る前に読むもんだけど。
脚本の良かった点は、パンフレットの対談にもあったけど、原文の言葉の意味よりリズムや調子を重視して翻訳されていたこと。シェイクスピア劇と言うといかに滑舌良く堂々と独特の冗長な科白を言ってのけるか、合戦みたいなイメージがあったのだが、今回は不自然さが全くなかった。主演ふたりが完全に自分の言葉にしてしまっていたせいもあるのだろうけど。前半で悪三郎が自分が殺した男の未亡人をくどき落とすシーン、圧倒されてしまった。あと、徹底して悪の道に走る悪三郎だけど、時に非常にユーモラス。笑うシーンが結構あった。この辺もシェイクスピアの原作(コミカルな側面がある)を活かしたのだそう。
忘れちゃいけない、白石加代子さんのひとり四役は白眉だ。政子(マーガレット)として出てくるシーンの呪いの手つきの複雑で生き生きとしたこと。皇太后(故ヨーク公未亡人)として我が子の残虐ぶりを嘆く声の迫力。ホントに4人分の存在感があった。器の大きな女優さんだ。あと久秀(バッキンガム公)役の石田幸雄さんは森本レオみたいなソフトな声が素敵な俳優さんだと思ったら、狂言師だったとは。一歩大人の世界に進んで能や狂言などもたしなんでみようかなーと、野心を持ってしまった。顔を見せない影法師のじゅんじゅんさん、お名前だけしか知らなかったので見れてうれしかった。
舞台装置は狂言を意識した作りで木製、後方に5本の渡り廊下みたいなのがあって、めまぐるしく変わるシチュエーションにフレキシブルに対応。脇に囃子。コシノジュンコさんの衣装は非常に洗練されていて、役者の動きが栄えた。メリハリの効いた照明はドラマチックなこの芝居を引き立てていたし、音響もそつがなかったと思う。素人なので本当はよくわかっていないのだけど、とにかくいい舞台だったので何でも誉めたいのだ。野村萬斎さんの演出力が良いのか。彼のことはこれから追っかけてしまうかもしれない。
この舞台を紹介してくださったのはシェイクスピアの好きな「ひらづみ」さん。どうもありがとうございました。新しいパソ、Vistaに頑張って慣れてください。
コメント (2)
国盗人、もう行かれたんですねー。舞台って、見てみないことにはアタリかハズレかわからないので、「面白そう」としか言えず独り言のようにblog書いていますが、楽しまれたようでよかったです。
かくいう私は来週見に行きます。楽しみです。
あ、戯曲、私は舞台見た後に読む派です。そういえばあまり予習ってしないかも。たぶん、テキストよりも「舞台作品」の方に興味があるからかもしれません。
投稿者: sdt | 2007年7月 7日 21:24
日時: 2007年7月 7日 21:24
>sdtさんこんばんは!
とても満足な舞台でした。
ただ天の邪鬼な私は、こんなに実力があるのなら古典に頼らないで新作をやればいいのにーとも思いました。
蜷川「オセロー」もチケットおさえてあります(お先にすみません)。
同じ舞台や美術展や映画を見た人の感想を読むと、人によって感じ方が全然違うんだなあと思います。
sdtさんお勧めだから面白いはず!とか決めつけて行っているわけではないので、「ひらづみ」は気軽に書いてくださいね。
投稿者: ogawama | 2007年7月 7日 22:24
日時: 2007年7月 7日 22:24